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その日のまえにのtomひでのレビュー・感想・評価

その日のまえに(2008年製作の映画)
3.0
画の質感はビデオ的で度々出てくる合成シーンもとてもチープ。いまどきのテレビドラマでもこんなに安い感じでは作らないと思う。おそらく大林宣彦監督の映画を作る上での興味が違う所に移っているような気がする。ワンカットワンカットを丁寧に積み上げて作る事よりも、より多くのカット、より多くの情報を撮る事に比重が移っているような気がする。

2008年作品だが、この時に大林宣彦監督は自身の体調の変化、もしくは癌の兆候などを感じていたのだろうか? 画的にはこのあとの強烈な戦争三部作「この空の花」「野のなななのか」「花筐」の助走のような作品にも思える。(戦争三部作は更に独走的に完全に振り切っている)

主人公のイラストレーターを演じた南原清隆、映画後半の妻の手紙を見た絶句の表情はとても良かったが全体的に嵌まっていなかったように思える。妻を演じた永作博美、泣きながら化粧を落とすシーンがとても良かった。生死が絡んだ映画なので観ている間は映画の中だけではなく色んな事を考えさせられた…。

個人的に大林宣彦監督は尾道三部作「転校生」「時をかける少女」「さびしんんぼう」や「青春デンデケデケデケ」でめちゃくちゃ嵌まり、全ては観ていないがその作品を追いかけて観てきた監督だった。キャリア最後となる戦争三部作のパワーも凄かった。大好きな映画監督のひとり。
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