とりん

見世物のとりんのレビュー・感想・評価

見世物(1927年製作の映画)
3.6
2019年32本目(映画館20本目)

新宿のK's Cinemaで行われていた奇想天外映画祭で鑑賞。
久しぶりにモノクロのサイレント映画を観た。
もっとB級のクセモノ揃いの映画祭かと思って構えて観たが、かなり観やすく話も入りやすかった。
特にあらすじとか観てなくて勝手な主観のみだったので、終わった後は重々しいか後味がえらい悪い映画だと勘違いしていた。
でも最後には素直に良い映画だったと少し心温まるようなスッキリした気分になった。

商人である羊売りの一人娘と見世物(今でいうサーカス、マジックショー的な類)の男女を描いた作品。
その関係の中にはお金が絡んでいて、見世物の男は自分の魅力を武器に金目当てにいろんな女を引っ掛け回していた。
そこで羊売りの一人娘とも関係を持とうとするのだけれど、見世物の女が彼の手を悪事に染めたくないと彼を諭そうする。
彼は彼女とのやりとりや周りの状況を見て、少しずつ改心する様子が描かれる。

サイレント映画なのでもちろん声での台詞はなく、字幕に映るのみ。
当時としては普通なのだけれど、これだけで伝わってくるのが本当にすごい。
これで重要なのは役者の演技力と魅せ方であるが、それがしっかり感じられる。
ピアノ主体の音楽も強弱で表現しており、場面場面の雰囲気を引き立てていた。

見世物の女性が最初はパッとしない少しポチャっとした方なのだけれど、だんだんとこの女性に惹きつけられていく。
魅力を出せる演技力と表現力がとても良かった。

普段観ているセリフある映画がいかに伝わりやすいかというのが改めてわかった。
作り手が多種多様な映画が作れるし、受け手もいろんな受け取り方ができる。
もちろんサイレントでも作り手受け手の多様さはあるけれど。
この時代に比べて表現の幅が広がったのだなと感じた。
とりん

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