とらキチ

ナワリヌイのとらキチのレビュー・感想・評価

ナワリヌイ(2022年製作の映画)
4.0
最近の世の中でしばしば起こる「現実がフィクションを遥かに超えた出来事」。そんな中のひとつを取り上げた作品。
ロシアの反体制派の活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏の毒殺未遂事件に迫るドキュメンタリー。
このニュース自体は、とてもよく覚えていて「本当にスパイ映画みたいな事するよなぁ…」とか「まぁ、ロシア(プーチン)なら確かにやりかねないなぁ…」とか思っていた。ドイツに移送されて一命を取り留めた事は知っていたが、その後の消息、続報も特に目に止まらずにわからない状態だった。
病状から回復したナワリヌイ氏は、イギリスの民間の調査報道機関“べリングキャット”とチームを組み、自ら犯人を捜し、突き止める。ちなみに“べリングキャット”は、ウェブサイトやSNSで公開されている情報を収集・分析するオープン・ソース・インテリジェンスを特徴としていて、だから、ちょっとしたコツさえ掴めば、我々でもこれらの情報を集めることが出来るということでもある。そしてその顛末を発表する前に、実行犯に直接電話をかけ、何故そのような犯行に及んだのか、問いかける。それが今作のハイライト。スペツナズ出身の“筋肉バカ”連中はなかなか尻尾を掴ませないが、毒物の分量、処方等を計算したのであろう化学者が、ついポロっとその実行内容を白状してしまう。その誘導尋問に引っ掛かり喋ってしまう様子は、笑えてくるけど、内容そのものには心底震撼させられる。
そして、もうひとつのハイライトが、2021年1月、彼がロシアに帰国し当局に身柄を拘束される様子の全てを記録していたところ。拘束後、彼の関連団体が黒海リゾート地の豪邸を「プーチン宮殿」だと暴露する動画を公開したニュースもよく覚えている。
ナワリヌイ氏の、タフでユーモアに溢れ、人を惹きつけるカリスマ的な姿がとても印象的。ただ、プーチン達とオリガルヒの癒着を主に訴えて、のし上がってきた人なので、この人自身の持つ、国家観そのものは不明。だから、もし実際に“ロシア”という“核兵器”をも内包した、とてつもなく強大な国家権力を手中にすると、どうなってしまうのかな、とどうしても懐疑的にはなってしまう。
それでも、今現在、ロシアのウクライナ侵攻について、収監されているが故、彼自身表立って活動出来ない現状をどう思っているのだろうか。
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