ほーこんそん

ハンサン ―龍の出現―のほーこんそんのネタバレレビュー・内容・結末

ハンサン ―龍の出現―(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 圧倒的な迫力の大海戦。このスケールの歴史映画を日本で撮れる気がしない(近年だと関ヶ原とかくらいかな?)。口から大砲を吐く亀甲船とか、紙でできてんのかと思うくらい脆い安宅船とか、多少のガバガバ要素はご愛嬌。あくまで歴史映画ですからね。絵面とインパクトこそすべて、ファンタジーと言われようとなんぼのもんじゃい。

 韓国人俳優の話す日本語を全編吹き替えるというのは、なかなか思い切ったことをするなと思いました。これまで植民地時代の朝鮮を舞台にした歴史映画とかをそれなりに見てきましたが、韓国人俳優のいまいちな日本語がノイズになることも多々ありました。朝鮮人役の話す日本語がいまいちなのはともかくとして、日本人役の日本語はもう少しちゃんと話してほしいというか…。

 ただ、日本語の問題は主な視聴者層である韓国には対して気にならないでしょうし、日本受けのためにわざわざ日本人俳優を使うというのも採算が取れないような気がします。だからこそ、日本側が独自に吹き替えを当てるというのはなかなかの英断なのではないでしょうか。口パクも大体合ってましたし、違和感は見ていてほとんどなかったです。役者さん本人の声が聞けないのは残念なところではありますが、こういった手法を今後も続けていってほしいです。

 内容については、脇坂安治がかっこよかったということが全てかもしれません。賤ヶ岳七本槍にしては知名度の薄い脇坂ですが、韓国では救国の英雄・李舜臣の好敵手ということでめちゃくちゃスペックが盛られています。小早川隆景が脇坂より格下っぽく描かれていたのはちょっと笑いました。また、脇坂以外にも黒田官兵衛や九鬼嘉隆、加藤嘉明や大谷吉継(らしき人)も出てきたりと、日本の戦国ファンにもおすすめです。本作はいわゆる「反日映画」に該当するのかもしれませんが、日本の武将はかなり忠実かつフェアに描かれていました。脇坂は冷酷ながらも有能な将として描写されていますし、「降倭」であるジュンサのように、善良な日本人も登場します。日本と朝鮮の戦乱が国と国の戦いではなく、義と不義の戦いであるという李舜臣の言葉が、全体を通して貫かれていたように感じます。

 一方で気になったのは、朝鮮側の描写の薄さ。自分が日本人というのもあるかもしれませんが、朝鮮側で印象に残った人物がほとんどいません。強いていうなら、海軍のおじいちゃんとその弟子くらい。主人公の李舜臣の心情描写もあまりに少なく、感情移入できませんでした。神がかり的な知将として描きたいという意図は理解できますが、正直影が薄かった感は否めません。日本人としては大満足ですが、韓国の人たちはそんなに楽しめないんじゃないかとさえ思ってしまいました。

色々言いましたが、豊臣秀吉の朝鮮出兵を描いた作品としては最高クラスのクオリティなのではないかと思いました。