荒野の狼

ハンサン ―龍の出現―の荒野の狼のレビュー・感想・評価

ハンサン ―龍の出現―(2022年製作の映画)
4.0
『ハンサン -龍の出現-』(原題:한산: 용의 출현 英語題 Hansan: Rising Dragon)は、2022年公開の130分の韓国映画。キム・ハンミン Kim Han-min 監督が2014年の『バトル・オーシャン 海上決戦』に続いてイ・スンシン(李舜臣)を主人公とし、壬辰倭乱(文禄の役)における1592年の閑山(ハンサン)島海戦を描いている。前作の日本語版がカット版されているのに対し、本作はノーカット。また、前作が1597年の慶長の役であったので、第二作である本作のほうが5年前の歴史事件を描いていることになる。前半50分は、展開がスローであり、話の筋も見えにくい。ところが後半より海戦になるにつけ、スピード感と緊張感が増し、クライマックスの「龍の出現」では最高潮になる。

本作の魅力は、龍の船首とギザギザのボディを持った亀甲船(亀船)であり、往年の怪獣映画ファンには、龍の部分はマンダ、ボディはアンギラスのようであり、怖くて強くてカッコいい。前作では臆病者で影の薄かった日本軍の敵役・脇坂安治だが、本作では若々しくギラギラして敵役にふさわしい(演じているのは前作と別の俳優:ピョン・ヨハン)。

圧倒的な戦力を誇る日本軍にイ・スンシンが見乃梁(キョンネリヤン)海峡におびき寄せる。舞台は、釜山に近い巨済島と本土・トンヨン(統営)市の間にある狭い海峡が見乃梁(견내량=キョンネ海峡)で、その南側の出口に浮かぶのがハンサン(閑山)島。秀吉の朝鮮出兵が映像化される例は少なく、事件に興味を持つ入門編として最適であり、また、日本の侵攻が現在にいたるまで韓国でどのような印象を残しているのか、を知る意味でも貴重。巨済島は釜山から橋がかかったこともあり、釜山観光の時にも、歴史的事件があたまにあると、観光の興味と幅が広がることになる。
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