カルダモン

ダークグラスのカルダモンのレビュー・感想・評価

ダークグラス(2021年製作の映画)
4.1
娼婦を狙った連続殺人が発生する中、ディアナは次の標的は自分であると察知する。

ある夜、車を走らせていると怪し気なバンが後ろをつけてくる。執拗につけまわされスピードを上げた結果、交差点に差し掛かった直後に横道から侵入してきた車と衝突事故を起こしてしまう。相手側の車に乗っていたのは三人家族で両親は即死、後部座席に乗っていた少年は無事だった。ディアナもなんとか一命は取りとめたものの、首に負ったダメージにより視神経がやられ視力を失ってしまう。

斯様に映画の導入はスタンダードなジャーロそのものなのだが、そこから先が一味違うというか良い意味で期待を大きく裏切られて、私的にはとても楽しかった。なにより主人公のディアナが負ってしまった身体的ハンディにまったく屈しておらず、悲観するでもなく至ってドライな点が素晴らしい。上客の男との関係も素敵。盲目になってしまった彼女に対して、醜い俺の姿を見ずに済むから、だって。冷める風もなく、お金ここに置いとくよ、なんて優しい世界すぎる。
昔ながらのホラーで定番だった追い詰められて叫ぶだけの女性像はここには微塵も無い。加えて少年と盲導犬との二人三脚?三人四脚?(二人一匹七脚?、杖を入れたら八脚??わからん)が素晴らしい。ケアワーカーのリタ(アーシア・アルジェント※監督の娘)もナイスです。正直なところ話運びが少しだるいなぁと思う点もあるけれど、こういう映画のテンポが失われつつある昨今、逆に心地かったり安心したりするんだよね。最近の映画うまくやろうとしすぎ問題。

でね、ここぞという見せ場を持って行ったのが犬ですよ。ホントにもうダリオったら!サスペリアでやってたことを反転させて見せるなんて洒落てるねー。

シビれたのはオープニング。ふと気づくと街の人がみな上を見上げているというシュールな光景。だんだんと陰っていく太陽。やがてそれは皆既日蝕であるとわかる。サングラスをかけて見上げた黒い太陽。光を失ったことで見えるものを象徴するようで、これまた洒落ていた。