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東京の宿のYasuyukiMuroのレビュー・感想・評価

東京の宿(1935年製作の映画)
3.7
小津安二郎監督、1935年のサイレント作品。妻に逃げられ、宿なし金なしの喜八(坂本武)は2人の幼い息子を連れて職探しをする毎日。そんな時、同じく宿なしで職を探す母娘に出会う。母役のおたかを演じるのは『東京の女』の岡田嘉子。

戦後の小津監督はブルジョワ層を描く事が多いけど、戦前は食うに困るような庶民も描く。野良犬を捕まえてお金に替えるとか衝撃^_^;
ただそこに悲壮感は少なく、喜八と長男(突貫小僧!)があまりの空腹で、エア食事&エア飲みするシーンは微笑ましい名場面^_^
初対面の子供達が原っぱで仲良く遊ぶのに対し、大人の喜八とおたかはそれを微笑ましく眺めるが、、、その微妙な距離感は結構好き^_^

でも微笑ましさは前半部のみ。娘の為に必死に生きるおたかの姿を見かね、行動を起こす喜八、、、
いわゆる人情もの、切なさ無情さが沁みる。コトを起こす喜八の心理描写に打上花火の映像とは斬新でした。

メモ
・坂本武演じる喜八が主役の3部作を「喜八もの」というらしい。本作は3作目。
・突貫小僧こと青木富夫は、戦前の名子役
・笠智衆は警官役、全然気づけない。
・原作ウィンザアト・モネは、without money(文無し)のもじり
・鎌倉、世田谷、銀座あたりのイメージが強い小津だけど、この映画の舞台は江東区あたり、生まれも江東区深川。
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