ギズモX

ウエスト・サイド物語のギズモXのレビュー・感想・評価

ウエスト・サイド物語(1961年製作の映画)
4.5
スピルバーグがリメイクしたことで今話題となっている、公開当時のオスカーを独占した傑作ミュージカル映画。

この映画の素晴らしさは、現代のロミオとジュリエットを描いた切ないラブストーリーであることよりも、薄汚れたニューヨークのダウンタウン、セットではないリアルな下町を舞台にした社会から跳ね除けられた不良達の青春群像そのものにある。

間違いなく主役よりも脇役のほうがカッコいい。
特に素晴らしいのがオープニングでスタイリッシュかつクール。
言葉ではなくダンスで表現するあの場面こそが、彼らを含めた当時の若者の中に宿る思いを一番強くそして的確に表わせていた。

ニューヨーク下町育ちのマフィア映画の帝王、マーティンスコセッシの作品や、『AKIRA』や『ウォリアーズ』といった不良映画の原点を感じさせてくれる作品です。

ちなみに、
この映画が公開された数年後、スコセッシの師匠で後にB級映画の帝王と呼ばれることになるロジャーコーマンは、今作でベルナルドを演じたジョージチャキリス主演でガチの不良集団"ヘルスエンジェルス"の映画を撮ろうとしていたのだが、一つだけ問題点があった。
彼は演技と踊りは最高だったのだが、肝心のバイクに乗れなかったのだ。

それに困ったロジャーは、代役のピーターフォンダにそのことで電話をかけたところ
「俺なら乗れるぜ」
と返事が返ってきたので、ピーターフォンダ主演で暴走族映画『ワイルドエンジェル』が制作され、そしてアメリカンニューシネマの傑作『イージーライダー』が作られることとなった。

もしもジョージがバイクに乗れていたら『イージーライダー』はなかったであろう。

リメイク版は良くも悪くも綺麗だった。
映像表現は素晴らしかったけど、なんか今作にはあった薄汚れた街並みや役者のギラギラ感がなくてちょっと残念。
スピルバーグが悪い訳ではないけれど、スコセッシとかスパイクリーに撮ってほしかったなあ。
あと、ベルナルドが露骨なマッチョに変更されていたのが少し引っかかったし、救われなさが増したラストが個人的に駄目だった。
ギズモX

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