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ウエスト・サイド物語のtanayukiのレビュー・感想・評価

ウエスト・サイド物語(1961年製作の映画)
4.2
スピルバーグ版を見る前に見たかったけど、あのときは配信してなかったよね?今回Apple TVで見つけて、新旧両バージョンを見比べてみた。ちなみにオリジナルを見るのは数十年ぶりだと思う。

コストも役者の体力や疲労度も無視して延々と撮影を続けたという完璧主義者で粘着質の振付師ジェローム・ロビンスが途中で現場を降ろされたというエピソードも納得の、完璧に作り込まれたダンスシーンはいま見ても迫力で、たいへん見応えがある。マイケル・ジャクソンがマネしたくなった気持ちもよくわかる。

→ 『ウエスト・サイド物語』暗黒の時代から完璧主義へ。20世紀を代表する振付家の最高傑作|CINEMORE(シネモア) https://cinemore.jp/jp/erudition/454/article_466_p1.html

その一方で、乱闘シーンとバレエ風のダンスが合ってない、というか、そもそも最初から殴り合う気ないでしょ、という演出はやや時代を感じさせる。

あと、不思議だったのは、ロミオとジュリエットに当たるトニーとマリアの印象がほとんど残ってなかったのに対して、ベルナルド役のジョージ・チャキリスのイメージだけは鮮烈に脳裏に焼き付いていたということ。今回いろいろ調べてみたら、ジェッツとシャークス(ジェット団とシャーク団の団ってなんだよ笑)のダンスは本物だけど主役級の5人の歌はほとんど吹き替えで、唯一、舞台版のロンドン公演でもリフ役でキャスティングされてたジョージ・チャキリスだけが本人の歌声だと知って、なるほどそういうことかと納得した。トニーとマリアに至っては、歌ばかりかダンスの腕前も二の次だったようで、そういえばこの2人はほとんど踊ってないことに今さらながらに気づいた次第。そういうのって、やっぱり伝わるんだね〜。

→ 永遠の名作となった『ウエスト・サイド物語』時代を先取りする革新性と舞台からの完璧な映画化 |CINEMORE(シネモア) https://cinemore.jp/jp/erudition/454/article_455_p1.html

ついでに言うと、オリジナルのアニタ役でアカデミー賞助演女優賞を受賞したリタ・モレノがスピルバーグ版に出てることも話題になったけど、あれって、オリジナルでは自分の歌声を使ってもらえなかった彼女がオスカーを手にしたことへの批判を封じ込める意味もあったんだね。今度こそ本物の歌声を披露したよとアピールすることで。

△2022/09/16 Apple TV鑑賞。スコア4.2
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