カルダモン

ファンタスティック・プラネットのカルダモンのレビュー・感想・評価

5.0
不安でFUNでファンタスティック。10年に一度くらいの間隔で観たくなる。それほどに一度見れば強烈に尾を引くなにかがこの作品にはあって、一度観ればしばらくいいや。となるんだけれども、また年月が経つとこの映画でしか味わえない心のざわめきを確認したくなる。

ドラーグ人の青い肌に赤い目は心をひどく不安にさせる。たひたび瞑想に耽ってはよくわからぬ形態に変貌したりして、手のひらほどの原住民オム族をペットとして飼うなど、およそ話が通じるとは思えない。ドラーグ人は高度な文明社会を築く一方で、オム族を脅威にも感じており、徹底的に殲滅しようとする。
不条理なのはドラーグ人だけでなく、周辺の自然環境や生息する動植物も輪をかけて変で、あまりにも無防備なオム族の最弱さが際立ち寒気がする。私は特に巨大な舌で人間を絡め取る怪鳥がニガテでした。

ヒエロニムス・ボスの『快楽の園』のような、あるいは筒井康隆の小説に出てくるような、不気味で気色悪くて人によっては嫌悪感しか抱かないであろうデザインや描写ではあるのですが、私はこの絵の質感がとても好きで、心の深層の部分に引っ掛かるような感覚はなかなか出会うことがなく、大事にしたいと思っています。

もう10年くらいは観なくても大丈夫だけど笑