KnightsofOdessa

Kolnati sme, Irina(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Kolnati sme, Irina(原題)(1973年製作の映画)
4.0
[マケドニア、割れた鏡と堰き止められた小川、そして溢れ出す愛] 80点

北マケドニア映画史上最高傑作との呼び声高い名作。人里離れた森の小屋に若妻と父親を残して若い息子は兵役のために村を離れ、残された二人は互いを見つめ合う。こんな淫靡な切り返しも中々拝めないというくらいに。彼らは小川沿いの水車小屋で小麦の製粉を生業にしていて、水を勢いよく流すシーンの意味深なカット、結婚指輪が妖しく光りながら義父のシャツを選択するシーン、寝ているイリーナに義父がそっと近付くシーン、義父の汚れた足をイリーナが洗うシーンでの切り返し、その全てが寡黙な見つめ合いでありながら、彼らの目線はあまりにも雄弁すぎる。原題の"呪われちゃったよイリーナ"とは、義父の登場に驚いたイリーナが手鏡を割ってしまったことに由来するのだが、後に続く義父と娘の禁忌的な関係性を象徴している。そこに、全身黒尽くめの商人がメフィストフェレスのように現れて、二人の間に割って入り、彼らを嘲笑って現実に引き戻し続ける。小川を堰き止める小さなダムが決壊し、愛が溢れ出してしまった時、全てが崩壊してしまうのは世の定めなのか。
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