みーちゃん

1640日の家族のみーちゃんのレビュー・感想・評価

1640日の家族(2021年製作の映画)
3.8
何の前情報もなく観た。日本よりずっと里親制度が進んでいるフランスで、当事者たちが何故こんなに苦しまなくちゃならないの⁉︎ 観客まで、どうしてこんなに辛いの⁉︎ って思った。

鑑賞後、本作は監督のファビアン・ゴルジュアール自身の実体験がベースになっていると知り、これが30年くらい前の現場を描いているならば納得(そして日本の福祉とは雲泥の差だと思う)。

私は、この苦しみや辛さの原因は、子供の人権の問題だと思う。当事者の中で唯一子供だけ、自分の気持ちを利害関係の無い人/機関に述べる機会も、それを尊重する仕組みもなかった(今は違うはず)。

実親と里親の立場は違うが、どちらの気持ちも行動も理解できる。誰も悪くない。大人はそれを表明していた。でも肝心の子供は、観客が察するしかない形で表現されていた。両者に挟まれたら子供は当然ああなってしまうだろう。

特に辛かったのは、本人の意思を無視して養護施設に預けられたこと。あの施設は素晴らしいが、いくら一時的な措置とは言え、シモンにとって、あのフェーズで家庭養護から社会的養護に切り替えるのが得策とは、どうしても思えない。

あの後、シモンは実親の愛情を受けて立派に育つかもしれない。いつの日にか里親家族とも再会し、交流できるかもしれない。シモンを家庭だけに託すのではなく、彼の幸せを支える人数が物理的に多いシステム自体はポジティブ。でも、あのプロセスは生涯のトラウマになりかねない。子供の人権の行使について改めて考えさせられた。