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愛する人に伝える言葉のfilmbug3.9のレビュー・感想・評価

愛する人に伝える言葉(2021年製作の映画)
4.3
進行した膵臓癌を告知された男、バンジャマンが、自身の死と向き合う物語。
余命幾日ものの映画は数多くありますが、その中でも本作の完成度はとても高いです。医療的には、終末期医療がテーマの映画、ということになりますが、終末期を扱った映画の中では、脚本の面、医学の面、映画づくりの面(技術面)のいずれも高水準な作品だと思います。死をどう受け入れていくかというところに、作り手の明確な哲学を感じますし、また医学的にも適切かつ正確な描写です。この手の映画にありがちな、同情を誘うとか感動的な展開を用意するとか、そういうチープな演出はなく、そもそも描き方の次元が違うといったところです。治すことができない病を前にしたときの、医療者の姿勢がとても素敵でした。
また、バンジャマンは演劇を教える仕事をしており、生徒たちへのレッスンのシーンがときおりはさまれますが、そこでは演じるということに関する生徒たちとバンジャマンとの対話、議論がさかんに行われます。こうしたシーンは、バンジャマンが死を受け入れていく過程に位置付けられつつも、末期癌を患っている、というところから一旦離れた視点が、作品全体に奥行きを与えています。その中で、存在感とは何か、という議論があります。自分が今ここにいること、自分の弱さを知って戦うこと、自分自身を映す鏡、など、生徒たちからは様々な意見が出ます。先生にとって存在感とはなんですか、と生徒から質問され、そこではバンジャマンは答えずに場面は切り替わります。そして死が刻々と迫りくる中で「存在感とは何かわかった、生徒たちに伝えなければ」と述べるシーンがあるのですが、結局それが何なのか語られることはありませんでした。死にゆく中でバンジャマンが悟ったその答えを私は知りたいと思いましたが、その答えが語られなかったのは、死というものと向かい合い戦った人間にしか悟り得ないものであるからかもしれないと感じました。

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