映画館にて、なかなか良い時の流れを体験させてもらった。事実しか映ってない。だけど思惑が見える。
もはや役目を失いつつある夫婦の愛と、一時の弾みで生まれてしまった恋。"愛などない"に、愛はあった。
一度久保留亜の書く言葉に触れてみたくなった。
主人公が忠告通り"無駄を大切に"した結果、今泉監督のオリジナル映画では面白い端役とも出会えるし、日常で出会いたくもなる。
それなりに凝った生活的な会話を書き、玉城ティナや若葉竜也といった味のある俳優に読ませることだけで得られる満足感みたいな、本質的な事も考えてしまう。
昨年の作品に比べてクスッと笑える小ネタが少なかったのは不満足だったけど、ちゃんとシリアスな主題を持っていたから仕方ないか。
僕らはどんな文体の小説を深いと感じ、相手の何を意識した瞬間に"好き"と感じ、相手の身体に何を求めるのか。
結婚してからも残る"好き"やその裏切りなどによる感情の機微なんてものは、ラブホテルにも行けない僕ら子供には理解しがたい所もあるけど、どの口が言うのかとツッコめる正嗣の滑稽さやゲスさは分かる。
