ろく

窓辺にてのろくのレビュー・感想・評価

窓辺にて(2022年製作の映画)
4.3
今泉監督は相手の目を見ない。

鏡越しに話し、ガラス越しに話し、蒲団の中から話す。だって相手の目を見るのは怖いじゃない。相手を「わかっている」ように思われるから。

今泉得意のディスコミュニケーションだけど、それが自分とマッチしてしまい「あー、この映画好きだ」ってなってしまった映画である。稲垣吾郎がそのまんま自分だと思ってしまいましたよ。だって怖いじゃない、相手の目を見るの。だって怖いじゃない、真剣に話すのが。だって怖いじゃない、自分をさらけ出すのが。

で相手もそうだと思っていると「そうじゃない」ことも多いのよ。だから人生ままならない。こんな言い方は噴飯ものだけど「お前、なんでそこまで(おれなんかに)興味あるの」って感じになってしまうんだ。

結局今泉監督の凄さって「みんな思っているけどはばかること」を大きな声で言ってしまうことじゃないかなぁと思ってしまう。「愛がなんだ」では「恋愛は一方通行だよ」と言ってしまい、「サッドティー」では「実はそこまでお前に興味ないから」と言って不興を買う。「猫は逃げた」では家族を守ることも守らないことも同等で考えてよくないって言い放つ。

そしてこれは「そこまで興味持てないんだよ」ってね。

だからダメ人間に今泉作品は刺さる。そうだ、ダメ人間(これも語弊があるけどあえて言ってしまおう)でも生きているんだからいいじゃない。そこそこうまくやっていけるんだからいいじゃない。確かに僕はそんなにあなたに興味ありませんよ。でもそれ以外何も迷惑かけてないじゃないですか。そこまで怒りなさんな。そんなことより甘いものでも食べましょうよって。

でフルーツパフェを食べる。

興味なくてもフルーツパフェの甘さは本物だ。いっしょに食べない?それだけ言えたらそれで良い。
ろく

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