くりふ

マーサ・ミッチェル -誰も信じなかった告発-のくりふのレビュー・感想・評価

3.0
【私は貝にならない】

2023アカデミー賞落ち穂拾い。Netflixにて。

これが短編ドキュメンタリー部門ノミネートって驚き。ファスト映画みたいだから。ニクソンへの“影響力”を映像でこう直球投げたのは初、なのか?そうとも思えないけれど…。

ウォーターゲート事件に関して、米本国では新たな動きがあったのですかね?

昨年「Watergate : A New History」という最新書籍が出ており、著者がマーサさんに関し、

“主に時代のミソジニーのために無視され、結果として彼女は歴史から抹消された”

“何が国を包み込もうとしているかについてアメリカに警告したが、彼女は無視された。ウォーターゲート事件の物語を語る上で、彼女はもっと大きな役割に値する”

…と発言しており、男社会という表舞台から、“ガスライティング隠蔽”されたのは事実のようですね。この流れからなら今、この映画が出てくることはスンナリ呑み込めます。

まず思ったのは、遥か昔に見て内容忘れた『大統領の陰謀』に、彼女出てたっけ?てこと。あの映画での扱いサイズと、本作を比べたらより、呑めることがあるかもしれない。もしや、‎“ディープ・スロート”よりも影響力があったりして?

とにかく、どこかで名前は聞いたかも?くらいの認識だったマーサさんの、基礎知識を得られたことはよかったし、原題『マーサ・ミッチェル効果』の意味も知りベンキョになった。

ニクソン一味ははじめ、どうせ女の言うことだ、と高を括っていた気がします。ところが尻に火がついてしまって、まさに“火消し”に走っちゃったワケだ。

が本作、事件の始中終、5W1Hがイマイチで駆け抜けちゃうから、わかったようでわからない。

ガスライティングに関しては、劇映画として掘り込んだほうがわかり易かった気がする。…と思ったら、同時期にドラマ化されていたのね、ジュリア・ロバーツ✕ショーン・ペンで。あまり評判になっていないようだから、進んで見ようとは思えないけど。

あと作中には出ないが、マーサさんは晩酌した後…つまりほろ酔いで…夫の書類漁りや盗み聞きで集めたゴシップ等を、記者に伝えるのが習慣だったらしい。そんな本人の癖が事件にどう影響したか?等も含めれば厚くなったのに。面白ければ、長くなってもいいのだから。

比べれば、『エレファント・ウィスパラー』の方が、案も質もよかったですが、アカデミー受賞までのものか?とは思う。まあ、ホワイトウォッシュ一辺倒から、彩りが豊かになるのはとりあえず歓迎しますが。平等に向かっている証だ、とはもちろん、思えないけどね。

<2023.3.15記>
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