一人旅

ザ・メニューの一人旅のレビュー・感想・評価

ザ・メニュー(2022年製作の映画)
4.0
マーク・マイロッド監督作。

孤島の高級レストランを訪れた若い男女が遭遇する恐怖の体験を描いた異色スリラーで、名優レイフ・ファインズが謎に包まれた一流シェフを演じます。

恋人(ニコラス・ホルト)と共に孤島のレストランを訪れた若きヒロイン(アニャ・テイラー=ジョイ)ら12名の富裕層の客たちが、シェフの提供するこだわりのコース料理を一品ずつ味わっていく中、やがて料理の内容をきっかけに不穏な気配が漂い始めていき…という“美食崩壊スリラー”で、通常の料理ではなく客たちの秘密と本性を表現した謎めいた創作料理の提供によってレストランに閉じ込められた客たちの間で動揺と不安が拡がっていく様子を、料理と調理員を取り仕切るカリスマシェフの真の目的とは何か―を最大の焦点にして描き出していきます。

日本のとある有名小説を連想させる作劇で、コースの一品一品をミニチャプターと見なした物語構成がユニークですし、次第にエスカレートしていく過激な料理内容に戦慄させられます。孤島のレストランにいざなわれた客たちが味わう死と恐怖のフルコースを増幅する不穏と緊張の中に描いた密室ミステリアススリラーですが、上級国民によって形式化され、“美味しい物で腹を満たし幸せを感じる”という食事本来の在り方を失った現代の見栄え重視の食文化に異を唱えた寓話的な作品に仕上がっています。
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