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ザ・メニューのoimoのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・メニュー(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

不穏な緊張感から片時も目が離せない、皮肉なメッセージがふんだんに込められた密室スリラー。

常連面しておいて今まで食べたメニューをひとつも思い出せないセレブ
心血注いで人が作ったものを容易くジャッジして生かすも殺すも自分次第とふんぞり返る神様気取りの批評家
ただ箔が付くから金を支払っただけの敬意の欠片も品も無い成金とそれを有難がる取り巻き
シェフを無条件に崇拝して簡単に全てを委ねてしまえる狂信的オタク

現代の資本主義のカオスの頂点に君臨する特権階級への強烈な皮肉が詰まっていた。
そんな客達へのエルサの態度、今考えると最高だったなぁ。
誰もが必死に有難がろうとする手間暇と皮肉をたっぷり込めた愛の無いメニューを、こんなの食べたくない、何か違うと突き返すマーゴに最初はヒヤヒヤさせられたけど、どんなシチュエーションでも本質を見抜こうとする姿勢こそが受け取り手に必要な最低限の心意気なのかもしれない。あらゆる創作物…私にとっては特に愛して止まない映画というアートに対して、それを生み出す造り手とその背景に対する思慮と敬意、そして愛情を忘れずに居たいものだなと心無いレビューを読んだ時なんかにはよく感じるけど、それに加えてそういうことを言いたかったんじゃないかと感じた。

絶望の中、原点のチーズバーガーを丁寧に作り上げるジュリアンの料理人としての喜びに満ちた表情が眩しく、同時に切なかった。
ただ終盤のエルサ、自分の方が有能なのに、ミスしてないのに、と評価されないことに苦しみながら死んで行く姿には辛いものがあった。特権階級に踏み付けられて死ぬまで完璧を求められそれを幸せと思い込まされてやり甲斐搾取され使い捨てられる労働者階級の縮図に思えてくる…
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