みおこし

類猿人ターザンのみおこしのレビュー・感想・評価

類猿人ターザン(1932年製作の映画)
3.2
あの”ターザン”シリーズの記念すべき第1作目。今から89年前の作品がこうやって観られるって、よくよく考えて素晴らしい時代にいるなと痛感する今日この頃。

1910年、アフリカの奥地で象牙が眠るという秘境での探検を続ける冒険家パーカー。そんな彼を追って娘のジェーンも海を越えてアフリカに到着し、父に同行することになる。秘境に向かう道中は過酷を極めたが、その途中で大自然に暮らし人間の言葉を話さない男ターザンと出会い…。

ターザン役を務めたのは、元水泳選手のジョニー・ワイズミュラー。巨大な体躯とあの象徴的な「アーアーアー」の雄たけび…。後に世界中の共通認識となるターザンのイメージを作り上げたのは彼だと思うとその偉大さが分かります。この時代の俳優さんってシャープなイメージの人が多いから、ワイズミュラーの登場は画期的だったんだろうなと。ジェーンとのやりとり、結構なツンデレ具合で(笑)今観てもちょっとキュンキュンするほどには可愛かったです。ジェーン役のモーリーン・オサリヴァンもきれいな女優さん!「ターザン!!ターザン!!へーるぷ!!」って叫び続ける演技が多くて、疲れただろうな…(爆笑)。

本作が映画史的に優れている点はその撮影技術。人形とか装置を使って撮影した…とのことですが、とてもそうは見えない…。ライオンとの格闘シーンとか、終盤の動物の大群の来襲のシーンとか、どう考えても生身の人間が演じているので、公式情報に掲載はなかったとしてもけが人続出だったんだろうなと思うとゾッとします。そんな危険なスタントを駆使して、この時代にあれだけリアルな動物の様子を描いている点は特筆すべき点かなと。ただ当時はまだ規制も緩かったせいか、動物たちが悲しい目に遭う展開が多くて辛かったです…。同じく原住民に対する人種差別の描写も色濃くて、90年という年月を経た今鑑賞すると当時の価値観について色々と感じさせられました。直接的に”グロい”ってことではなく、非人道的に”残酷な”シーンが多いので、ご覧になる方はちょっぴり覚悟してご覧になったほうが良いかもしれません。
上記のような見どころもある一方で、展開はかなりスローテンポだし、ラストも粗い…。特に前半は延々ジャングルの奥地を探検隊が進むシーンが続いて、だいぶ時間が経ってからターザンが出てくるので待ちくたびれました(笑)。そういえば『キング・コング』も主役が出てくるまでが長かったっけ。
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