こたつむり

感染列島のこたつむりのレビュー・感想・評価

感染列島(2008年製作の映画)
2.0
♪ 愚かなる生き物たちを
  闇に囲まれた廃墟に導きたまえ

未知のウイルスに襲われた日本列島…。
って今の世界を予測したような序盤。これはかなりの社会派ドラマを期待できるぞ…なんて思ったのも束の間。主軸はズレて、ズレて、ズレて…辿り着いた着地点は…限りなく微妙。

いや、物語としては王道ですよ。
でも、演出の全てがベタすぎて…心を寄せるどころか、離れていくばかり。

湿っぽい場面は雨を降らそう。
医者が失敗したときは「人殺し」と叫ぼう。
雪が降る中、母親を思う幼な子の表情は胸に迫るだろう。

どれもこれもが安易。
しかも、ウイルスには“神の責め苦”という意味で《ブレイム》と名付けるセンス…これは天然なのか、それとも狙っているのか…気付けば顔は歪み、鑑賞後には思わず拍手していました。映画が終わったことに。

特に妻夫木聡さんの役柄がしんどかったです。
医者としての理想を振りかざす青臭いキャラクタは嫌いではないのですが…本作の場合、アク抜きを忘れた野菜のように“エグみ”を感じちゃったんですよね…。

思うに、彼のようなキャラクタには対抗馬が必要。つまり、石川先生には司馬先生をぶつけないとダメ(by『振り返れば奴がいる』)ということですね。ちなみに僕は司馬先生派です。戻ってこい!石川!

閑話休題。

なお、本作を仕上げたのは瀬々敬久監督。
前後編の大作『64』のときも思いましたが、事象を追う部分は息を呑む描写があるんですけど、人間ドラマになると“テンプレート”から脱しないんですよね。本作は脚本も手掛けているので…“人間ドラマ”が描きたい監督さんなのでしょう。勿体ないなあ。

まあ、そんなわけで。
口を開けば酷評しか出てこない作品。
コロナウイルスが猛威を振るう昨今と比較してみると、その辺りの描写はかなり頑張っているので…安っぽい(失礼)ドラマに目を瞑ることが出来れば…楽しめるのかも…。
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