「何か怖いことがあっても、これを見ればどんな恐怖も吹き飛ぶ」
映画を見る目的って、いろんな言い方ができると思うけど、今作を見て思ったのは以下の二つ。
それは、①ここではないどこかへ行ける現実逃避的な心地よさ、あるいは、②ここの良さを実感できる現実肯定的な心地よさを味わえるからだ。
①は夢溢れるSF映画「ハリー・ポッター」や「スター・ウォーズ」など、②は末恐ろしいホラー映画「ホステル」や「ソウ」などが個人的には当たる。
そして今作はホラーではないんだが、現実の方が100倍マシといった感じの内容となっていて、まさに②の需要を満たす作品となっていると思う。
映画館で見るべき映画との声もある今作。でも個人的には家で見て大正解の映画だった。パソコン画面で見ていても終始胸がフワフワして、高所恐怖症が悪化するような感覚を覚えました。いや、これ、心臓に悪かった。
今作における塔はおそらくトラウマとか恐怖のメタファーなんだろうけど、そういう意味では、今作は【トラウマを乗り越えるべく一歩前進する女子二人の物語】と言えるだろう。
怖いことに目を向けると怖い。恐怖はどんどん広がっていく。だから女子二人は恐怖(下)から目を逸らして、希望(上)を見て登り続けるわけだけど、でもそしたら後戻りできなくなっちゃうという・・・。
そこにはやっぱり、トラウマを乗り越えるといいながらも、京楽的快楽に突き進んでいる側面が多大にあって、ちょっと立ち止まることの大切さを思い知るところ。おそらく死に近づくほどに快楽は高まるんだろうけど、彼女たちの行動は明らかに一線を超えちゃってるんだよな。
だから、そんなときこその『映画』だ。
僕は一線を超えずに間接的に京楽を味わう手段として『映画』があると思っている。僕らは安心安全の環境で間接的に京楽的体験ができる時代に生きている。これは今を生きる僕らの特権でもあり、映画という最高の娯楽に感謝しかないところなのだ。
映画自体は、主要キャラ二人、半径1メートルの環境に関わらず、飽きのこない展開で引き込まれる。低予算でも工夫次第でここまで面白くできるんだと「ソウ」に似た感動もあった。後半のある仕掛けも鳥肌。「人生は儚い、一瞬一瞬を噛み締めよう」という最後のシンプルメッセージも好きでした。