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GOのtakのレビュー・感想・評価

GO(2001年製作の映画)
4.0
 これは傑作。窪塚クン主演のコリアン・ジャパニーズの青春映画。予告編観た時は、ギターポップが流れる若いコ向けな映画という印象だった。ところがきっちり親世代にも受け入れられるテーマを持ち、さらに親世代を演ずる助演陣の好演も合わせて見事な快作に仕上がっている。

コリアン・ジャパニーズが登場する映画は今までにもいくつかあった。だがティーンエイジャーの視点から今までの日本映画で語りにくかった部分を、絶妙なユーモアを交えて描いているところが面白い。「これは僕の恋愛に関する物語だ」としつこくてちょっと自嘲的なナレーションが入るのも好き(ウディ・アレン好きだから?一理あり)。

 その恋愛映画部分の二人の会話は、「ねぇ日曜日は何してる人?」とか今ドキ言葉の応酬なんだけど、実は結構堅実な内容だったりして好感。デートも彼女の家でレコード聴いてたり。二人が映画の話するところなんて笑えるよね、”ヴァン・ダム”とか。柴咲コウが階段から登場する場面に「こんな美しいものぁ見たことがねぇ」なんて落語がかぶさる演出は絶妙。コウちゃんすっごく美しく見えた。日本人でないことを告白するシーンはさすがに切なかった。差別の実態はもっと陰湿なことがたくさんあるのだろうけど、ああいう風に描かれると今ドキの人々もさすがに空気を読めるだろう。シェークスピアの言葉を引用して、主題をより鮮明なものにしているけれど、映画化されたことでそれはより一層かみ砕かれた気がする。ラストの窪塚クンの叫びは本当に胸に迫る迫力がある。

 久々にいい台詞が数多く聞ける映画だ。宣伝にもそれがうまく使われている。僕は、山崎努がボクシングを教える前に主人公に語る台詞が特に好き。「左手を伸ばしてみろ。それがお前の手の届く範囲だ。でもその外には・・・(後は本編で)」うーん、これは覚えておこう。最後に言っておきたいのは、脇役も含めて出てくる人たちが本当に懸命に生きてるってことが伝わってくる映画だということ。それがどこか安穏と生きてる今の僕らに喝を入れてくれる。
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