Melko

GOのMelkoのレビュー・感想・評価

GO(2001年製作の映画)
3.9
「くるパーはさ、もったいない生き方した方が良いよ。もう随分ズレた生き方してるんだから」

ずっと見たかったけど、なかなか難しい題材と、個人的に合う合わないが激しいクドカン作品で躊躇していたのを、やっと。思ってたより引き込まれて、あっという間に見終わった!プレイバックや、いきなりリアリティに引き戻されるクドカン流。これは合うやつだった。

フレッシュさ全開で、何気にセリフが棒読み感ある窪塚が、とにかく初々しくてカッコいい。それでなくても10代の悶々とした雰囲気と、在日という足枷を履かされる生き辛さ、閉塞感が滲み出ていて良い演技だった。
初っ端から暴力やいじめのラッシュで苦手な感じで、どうなるか、これ見終われるか?と思ったけど、柴崎コウ演じる桜井が出てきてからファンタジーさもプラスされ、でもシビアで、痛く、憤り、悲しく、切なく、最後はキラキラな、不思議な仕上がりになっていた。なんかちょっと夢を見てるかのようなBGMの時もあり。。でもそれって、窪塚演じる杉原が現実逃避してる表現なのかな?とも思ったり。

男が喧嘩をするのは、強さを見せたいから、他にやることないから、とか理由は色々あるけど、杉原が喧嘩をすることに理由はない。彼が言うように、「殴られるのが嫌だから殴るだけ」。それほど、「何もしてないのに殴られる」人生を生きてきたのだな、と思わされる。
親の世代が解決しなかったせいで、ただ、生きてるだけで差別されいじめられる子どもたち。引き裂かれた兄弟の、涙誘う感動話なんか、だせえ!要らん!そんなことより、ちゃんと解決しとけや!ってのは、ごもっとも。

つまるところ、杉原が、最後桜井に向かって吠えながら胸の内をぶちまけたことに尽きる。ずっと胸の内にあったこと。引っかかっていたこと。
「在日って呼ぶってことはなあ、俺がいつかこの国から出て行くよそ者だって言ってるようなもんなんだよ!
お前ら俺が恐いんだろ!名前付けなきゃ不安で仕方がないんだろ!」
肌の色も目の色も同じ。日本人と何も変わらないのに、生まれた時から言われ続けるということ。意味がわからないんだから、おかしくもなる。叫びたくもなる。

名前なんて、国籍なんて、関係ないのかもしれない。でも、この映画で見たことをしっかり理解し共感できてしまった自分としては、時代が進んでないんだな、とちょっと残念にも思ってしまった。
正一のような行動をできる人が、令和の今、どれぐらいいるだろうか。

拳の描く円の先へ。
円の中にいたら安心できるけど、それじゃダメなんだ。何も変わらない。
わたしには、何ができるだろう。本を読んで知識を吸収したり、勉強したり、選挙に行ったり、そういうことなんだろうな。
理不尽に立ち向かうための、知識と勇気を養うこと、なんだろうな。きっと。

「GO」が、
最初は「行け」だったのに、
最後は「行こう」なんだね。
Melko

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