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劇場版モノノ怪 唐傘のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

劇場版モノノ怪 唐傘(2024年製作の映画)
4.5
【構造的パワハラのアニメ表現】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=xsaTH8Qrt4s

予告編で気になっていた『劇場版モノノ怪 唐傘』を観てきた。本作は2007年にテレビアニメシリーズとして放送されたアニメの劇場版とのこと。アニメから随分経つのに映画化されていることにも驚きだが、なんといっても和紙に描かれた日本画テイストのタッチが色彩豊か、ぬるりと動く様にただ者ではないものを感じていた。ただ、実際に観てみるとヴィジュアルだけの作品でないことが分かった。なんとパワハラ問題を扱った作品だったのだ。早速レビューを書いていく。

本作は大奥に入るふたりの女性を中心にパワハラ問題を扱っている。大奥に入る者は、最初に「捨てる」アクションを行わさせる。それによって組織の一部にさせられる。アニメならではの表現として、個ではなく組織の一部として見放された者の顔は渦巻となっており奥なる存在へと追いやられている。厳しい大奥に入る二人。方や仕事ができる女で方や無能な女。後者は、無能である一方自由な振る舞いで目立ってしまい、先輩上司に詰められるようになる。それを前者が庇おうとするのだが、ギスギスした空気が収まることはない。そこへ薬売りが現れ「モノノ怪がいる」と敷地内を徘徊するようになる。

パワハラ問題は意地悪な個によってもたらされるように思えるが、実際には組織の体制によって個の性格が歪められているのではないか?加害者を排除したとしても、構造を改善しなければ再発してしまう。これをアニメとして表現している。実際に加害者はモノノ怪に吸収される形で消滅してしまう。仕事ができる者が段々と心を捨てていき、その中で暴力が生まれることを自由自在な画の洪水でもって描き切る。こういった問題提起の方法があるのかとひたすら関心し、気が付けば映画が終わっていた。これは海外の大きな映画祭でコンペティションに選出されてもおかしくない作品であろう。驚きの一本であった。
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