すずき

野いちごのすずきのレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
3.4
医学博士のイサク教授(78)は、一見人格者で町の名士。
だが、息子の元を離れ、一時的に彼の家に身を寄せている息子嫁マリアンヌや、長年連れ添った巨乳メイド(70over)等、親しい家族には、表面的な優しさだけのエゴイスト、と思われている。
名誉博士号授賞式の日、イサクは不吉な夢を見たことで急遽予定を変更し、車で行くことにする。
マリアンヌも夫のもとに戻る決心がついたのか、車に同乗すると言い出す。
ギクシャクした関係のまま、途中で立ち寄ったイサクの旧宅で、彼は過ぎ去った若かりし日の出来事を幻視する…

「老いと若さ」「男と女」「親と子」「生と死」「現実と幻」…相反する2つの概念を対比して描くストーリーと映像美が見所の、巨匠イングマール・ベルイマン監督のロードムービー。
当時のベルイマンの家庭問題が色濃く反映されている、とのこと。
でも一番の見所は、主人公・イサク老教授の名演技!
これが遺作となる(イサクだけに)、すっげー演技上手い爺ちゃん、ヴィクトル・シェストレムの名演をご覧あれ!

旅の中で出会った人々や出来事、それによってイサク教授は過去を見つめ直す。そして彼は大きく変わっていく(成長する)…わけではない。
ラストでも彼を取り巻く人間関係問題は解決されないまま終わる。唐突、と感じる人もいるかも。
でも、彼の内面の少しの変化の兆しが、これからきっと悪いようにはならないだろう予感を感じさせて終わる、悪くない余韻を残す。

ところで、俺ずーっと「ベイルマン」監督だと思ってたけど、「ベルイマン」監督なのね。