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野いちごのSIのレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
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2018.7.21
恵比寿ガーデンシネマにて鑑賞

イングマールベルイマン。
北欧の天才。

初めて作品を観たが、痺れる経験は無かったのでもう少し見ないとその良さは掴めない。

調べる限り誰も触れていないが、今作の脚本が精神分析的視点に多分に影響を受けているように感じるのは自分だけなのだろうか。

ストーリーの転がしとなる、イサクが度々観る示唆に富んだ夢。
開業した地を訪れる際に不意に口から出る失錯行為。
夫との口論で車を横転させた夫人の持つヒステリー。

彼がみる夢は以下の通りだ。
「秒針の無い時計」「触れただけで破裂する紳士」「街灯に突っかかり進めない馬車から落とされる自分の死体」。
これらはイサクが死を恐怖している事を端的に表している。
「理不尽に落第させられる医学部の試験」。
これは彼が名誉博士号を持つに相応しくないという無意識の発露だ。
「自分と付き合っているにも関わらず弟に唇を奪われるサーラ」「妻と知らぬ男の不貞」「ラストシーンでイサクを迎え入れる父母」。
妻の背徳は夢ではないかもしれないが、他は想像の産物である。
イサクはエディプスコンプレックスを正常には通過できず、「自分以外とつながっている母親」というイメージを、好意を寄せた女性に常に転移させてしまっていた。
ラストシーンは彼のエディプスコンプレックスが彼の中でようやく終わりを迎えたことを意味しているように感じたがどうか。

ならばこの作品は、78歳のイサクが自分自身の無意識への抑圧をようやくはっきりと意識し、道中出会う人々によって次第にその解消を迎える成長物語ということになる。

なんともイカれた映画だ。
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