ポラ丸

野いちごのポラ丸のレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
4.8
「ベルイマンが難解だなんて誰が言った?」
2018.7.21 エビスガーデンシネマにて鑑賞

長い間多くの人に愛され続けてきたベルイマン作品。
だけども作品解説やレビューを読むと、そうなの?って思うことが多い。
多くの人が複雑にとりすぎている気がする。

ベルイマンの魅力は「純粋なこと」そのシンプルさがいいんだね。
映画界の巨匠たちに愛されたのもピュアだからではないか。
たしかに才気溢れる人だし絢爛に描かれるとシンプルさが見えにくいこともある。そもそもシンプルな真実は理解しずらい面もあるかもしれないけど。

本編は一人の老医師が名誉博士授賞式のため車で旅をする。
その途中の懐かしい場所から想起される想い出や老医師を襲う悪夢を交えて物語は進んでいく。

同行する息子の嫁、家政婦、息子そして昔日の妻との会話。
それらは老医師の生き方、人格に対する厳しい批評だ。

青年時代の許嫁の裏切り、妻の不貞、嫁への同情・・自分では相手を思いやり、許容してきたはずなのだが相手はそうはとらない。
愛情をもって接してくれるのはドライブに同乗させた若者3人やガソリンスタンドの若夫婦・・どちらかと言えば遠い存在の人たちだ。
自分が愛する人たちに受けいれられない寂しさ。

人生の海に一人で乗り出した時からそれは宿命なのだろうか。

最後に海岸で手を振り微笑む若い両親の夢がやってくる。
自分の全てが受け入れられた懐かしいあの頃‥
ようやく老医師に安堵の表情が浮かぶ。

その時、観客はそれまでの老医師の回想では
何時でも両親が不在だったんだなぁと気づくんだね。
ポラ丸

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