ゆうしゅん

野いちごのゆうしゅんのレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
4.7
神の存在に懐疑的な立場をとる監督ベルイマンだが、

宗教的な体験を日常的なシーンとして取り入れていることが多い。

『第七の封印』で死神と命をかけてチェスをやりあうところとか。

この『野いちご』に出てくる大学の査問試験も、極めて宗教的な体験を象徴して
いる。
名誉教授を授与されるほどの医学博士の主人公なのに、
顕微鏡さえ、まともに見ることができない。
医師としての基本の心構えもおぼつかない。
そして、亡くなった妻から、「冷たい、自己中心的」という罪名で告訴されてい
る。
つまり、死んで地獄の閻魔大王に自分の人生を総括させられるような宗教体験に
なっているのだ。

どんなに社会的な名声を博そうが、財産をなそうが、
周りの人たち、家族と心を通わせ、
「あの人はいい人だった」と感謝されるような一生を送れるかどうか。
どんな人も胸にズキンとくる映画です。
ゆうしゅん

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