ryosuke

野いちごのryosukeのレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
4.2
やはり映像的には超現実的な悪夢のシーンが良い。特に冒頭の悪夢のイメージの連鎖は素晴らしい。ちょっとそこで期待し過ぎたが、全編面白く見られたので良作だった。
とにかくディスコミュニケーションの連続で構成されているのだが意外に不快感はなく、ベルイマン作品の中でも特に会話劇が面白い作品となっている。絶望と人生へのうんざり感に控えめなユーモアセンスで味付けがしてあり退屈させない。
ベルイマンってゴダールとかと同様男と女の間には決定的な断絶があると考えていた人っぽいな。
かつての婚約者との一人二役(ビビ・アンデショーン)であるヒッチハイカーに「イサクおじさんが一番好き」とか言わせるのは心憎いが、よく考えたら現実ではないのかもな。この辺りは現実と夢がシームレスに接続される全体の構成によって解釈の余地が残される。
本作のイングリッド・チューリンはちょっとあり得ないレベルで美しい。
ベルイマンの絶望を全て注ぎ込まれたヴィクトル・シェストレムの長年の苦悩が刻まれた表情に味がある。 いつも通り老醜が描かれてはいるが、息子(グンナール・ビョルンストランド)の鋼のような冷たさ、刺々しさと比べると老いによって穏やかな諦念、ささやかな救いが得られたかのように、わずかに肯定的に描かれているようにも思える。まだ若者の身分ながら老いがそういうものなら良いな...としみじみ思う。
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