安堵霊タラコフスキー

四月の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

四月(1962年製作の映画)
4.8
イオセリアーニの初期の中編だが、中々にユニークな作品で面白かった。

この作品は殆ど台詞が無いサイレント調の作りになっているが、にもかかわらず音の使い方が巧みで、単なる情報や雰囲気作りの為でなく演出の一つとして音を有効利用するその姿勢に好感を覚えた。

展開も空間を見事に使った実にユーモラスなもので、それを小市民のカップルを中心としたブラックコメディとして描いた点は後の彼の作品に通じるものがあって、ここにはイオセリアーニの根幹にあるテーマというものが感じられる部分だった。

というか音の使い方にしても中盤で見られる鍵穴から他人の部屋を覗く行為にしてもジャン・コクトーの詩人の血を髣髴とさせる要素で、音を巧みに用いたサイレント調の芸術作品ということでおそらく手本にしたのであろうけど、超現実的手法を庶民的作風に還元した点にもイオセリアーニらしさが感じられた。

とにかく温故知新的かつ挑戦的に撮られたこの作品は、後にグルジア(ジョージア)一の巨匠となる映画監督の萌芽が垣間見える力作となっていて、実に気持ちの良い映画だった。