菩薩

四月の菩薩のレビュー・感想・評価

四月(1962年製作の映画)
4.4
イオセリアーニ曰く、恋する男女に必要なものは、人目をはばからずキスが出来る空間と、疲れた時に腰を下ろす一脚の椅子、後は最低限のライフライン、火・水・灯だけなのだと言う。そんな事は勿論ないだろうが、物が増えれば二人の世界は狭くなり、管理の名目上鍵が必要となり、増えすぎた鍵は二人の心にも鍵をかけてしまうらしい。思えばスコリモフスキも『手を挙げろ!」の中で、増えすぎた鍵の束は強欲の象徴であるやらなんやら言っていた様な…。これは社会主義圏の共通認識なのだろうか。耳を澄ませば豊かな音が溢れ出す世界を、物欲から発せられるノイズが掻き消し黒く塗り潰していく、強欲は二人の間にすら亀裂を生み、生活そのものを破壊していく。一度手にした物を手放すのは怖いが、それ以上に一度握りしめたその手を離す方が恐ろしいのではないか、言葉すら必要とせぬ二人なのだからこそ、本当に必要な物は何かなど考えずとも分かるだろう。物より愛を詰め込んだ二人の世界は、どんな空間よりも尊い幸せに満ち溢れている、もはや壁すら必要ではない、あなたがそこに、いれば良い。
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