マントル

ベルリン・フィルと子どもたちのマントルのレビュー・感想・評価

4.5
ドキュメンタリー。
ラトルやダンスの先生や子どものインタビューで構成されていて、演奏や音楽は少なめ。

予想に反した中身だったけれど、紛争や政治に関わる出自、それ以外にも家庭事情の複雑さから、本質的な屈折を持った子どもたちを舞踏に出会わせるという、何とも壮大なプロジェクト!それに画面を通して立ち会える映画でした。


音楽は、実利とか有益さとかとは異なる次元にあることが価値なのだと思っていましたが
ラトルが追求する音楽の社会貢献性にはこういうことか、と納得しました。
音楽と舞踏と出会い、子どもは肉体の持つ力と身体のコントロール、自分を制御する方法を身につけ生きて行こうとします。


世界最高峰のベルリンフィルを指揮するラトルが、音楽は贅沢品ではなく人生の必需品だと語ります。
このドキュメンタリーのラトルの言葉と取り組みに接すると、
単なる音楽愛好家の感慨ではなく、すべての人に当てはまる音楽の価値を信じられたような気がしました。


それにしてもrhythm is it! は何なんだろうと気になっていましたが、これもラトルの語りの中で、人がコミュニケーションを取った最も古い手段がリズムを取ることだったのだと言われてました。
ドラムセットを買い与えられて、人の根幹にリズムがあることを知覚するようになり
また生涯音楽と生きる運命が識ってしまったといいます。
ラトルの音楽を見ていたくなるわけが、詰まっていたよう。