真鍋新一

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IVの真鍋新一のレビュー・感想・評価

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)
4.2
『クリード』『クリードⅡ』を観た後だと感動が倍増。9割がた泣きっぱなしだった。勧善懲悪的に出てくるドラゴにもその後の物語があり、よく見ると単純なヒールでは全然ない。オリジナル版を見返してないので確認が必要だが、思っていた以上にずっと深みのある話で、作品の印象は相当良い方向に更新された。

ところで、冷戦終結を控えていた当時の国際情勢を踏まえた社会的なメッセージについて「それはプロパガンダだから良くない」というレビューが散見されるけどと、それがどうにも理解できない。大事なのはメッセージの中身じゃないのか。最後にロッキーがインタビューで言ったことをちゃんと聞いたのか?

むしろこの映画は、ボクサーがただ戦うというだけなのに、国同士の国民感情とは無関係ではいられないという悲劇。ドラゴにも国の宣伝に利用された被害者という側面がある。アポロだって黒人としてのし上がってきたからこそアメリカ人としてのプライドがあって、ジェームス・ブラウン(役名はhimselfじゃなくて「Godfather of Soul」)が歌う「Living in America」を踊りながら、必要以上に背負い込んでしまう。

ロッキーはイタリア系アメリカ人だから、「イタリアの種馬」とリングで紹介されるたびにそういう面も思わずにはいられない。『ロッキー』はこっちが思っているよりもずっと複雑な映画だった。ただ試合に勝って喜ぶ映画じゃない。むしろ負けた人の苦しみを引き受ける映画だと思う。

これは今作に限った話ではないのだが、『ロッキー3』でアポロとロッキーが浜辺でトレーニングしてる場面が好きで、回想シーンであそこが出てきたら絶対泣く。
真鍋新一

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