ちょげみ

映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)のちょげみのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

 あらすじ
 出来杉君から学校で理想郷の存在を聞き、理想郷に想いを馳せるのび太。裏山でねっころんで空を見上げていると三日月型の理想郷と思しき物体を発見する。なかなか信じてくれないドラえもんを説き伏せ、三日月型の物体の目撃証言を歴史上の新聞から収集し、旧式の飛行船を買い(ローン)、いつメンと一緒に時空を超えた理想郷探しに出発する...

 巧妙に貼られた伏線、数多くの人間の心を刺激し震わせてきた物語上の理想郷(桃源郷、竜宮城、アトランティス)を題材にとった点、なかなかドラえもんの映画では数少ない空を舞台にタイムツェッペリン(レッドツェッペリンを思い出す)や三輪飛行機など関心をそそられるマテリアルは多かったが、残念ながらいまひとつ物足りない出来だったなと思う。
ソーニャのご都合主義的な復活(将来的に)、のび太ら4人が心を取り戻すシーンが少しあっさり感じられた点がうーん、、
そしてなにより虫に変える銃が登場したときに冒頭のシーンに繋がるのか、と感じた時、その同じ日にドラえもんが二人同時に存在する、というシチュエーションはのび太と新魔界大冒険を思い出した。そして新魔界大冒険と比較しながら(頭にこびりついたまま)映画を見て行く中で最後のシーンを迎えた。新魔界大冒険のラストシーンに比べるといささかインパクトが足りなかったのかと..感じた。

 さて理想郷(ユートピア) 争いや競争のない世界、大きな悲しみや怒りがない代わりに喜びや生きる上で生じる興奮もない、という題材は複数の創作作品で語られているが、私は村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の壁に囲まれている世界を思い出した。
 「それについてはもう少しあとでしゃべろう。まず心の問題だ。君は俺にこの街には戦いも欲望もないと言った。それはそれで立派だ。俺だって元気があれば拍手したいくらいのもんさ。しかし戦いや憎しみや欲望がないということはつまり逆のものがないっていうことでもある。それは喜びであり、至福であり、愛情だ。絶望があり幻滅があり哀しみがあればこそ、そこに喜びが生まれるんだ。絶望のない至福なんてものはどこにもない。それが俺の言う自然ということさ。」

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