Jeffrey

マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺のJeffreyのレビュー・感想・評価

3.5
‪「マラー/サド」‬

ATGが配給した外国映画で未だに未見だったP .ブルック監督の「マラー/サド─マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺」とかなり長いタイトルを持つ本作が遂に紀伊國屋から初円盤化され届く。これから初見する。楽しみだ…!!

‪冒頭、シャラントン精神病院。

舞台は1808年のフランス。白装束に身を包む患者達。歌い踊り始める。看護婦の監視、鉄格子越しに劇の上演が始まる。今、内と外で民衆と道化達の歌によって劇中劇が展開される…

本作はP.ブルックが1967年に映画化したP.ヴァイスの戯曲。

特徴として長いタイトルを持つ作品で"マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺"とこれが本来の題名だ。

まず、ATG配給の本作は漸く円盤化され初見したが凄い緊張感と迫力に満ちた映画だ。

ブルックと言えば蠅の王やリア王などで知られる監督だが、数年前に角川から発売したスワンの恋や雨のしのび逢いも好きで持っているのだが、遂に手元に置けて幸せである。

さて、物語はフランス革命を指導した過激な急進派ジャン=ポール・マラーが穏健派のヒロインに浴槽で刺殺された一連の出来事を入院中のサド公爵が周りの患者を使って上演すると言う話なのだが、これが異様で凄じいんだわ。

まず、観客をほったらかしにして劇を中断させるわ、それによって我々は混乱するわ、不意に鉄格子の内側から外へとカメラが流れ始めたり、役者の素晴らしい芝居が濃密な映像体験に変貌している点など凄い。

取り敢えず、本作を観たら「クイルズ」も鑑賞するのをお勧めする。

いや〜英国が誇るだけある演出家だと改めて思わされた。

こんな革命的な歌劇を見たことが無かった。てか、G. ジャクソンが出演していたのに驚く。彼女は確か2度オスカーに輝いていたはず…彼女がマラーを殺すシャルロット役とは中々だ。
すげ〜芝居を見せていた。
生々しく、何もかもを解放しきった姿は圧巻。

にしてもやっぱり御フランスですよ…何がって?そりゃ冒頭から凄い台詞が流れる。この浴室と言う空間を舞台に“教育と芸術“を通しての治療が効果的と考えていると…この感覚がフランスらしいよな。

色情狂や過激な思想、革命の協力者、田舎出の娘、上流階級、元聖職者…凡ゆるタイプが入り混じるカオス的な2時間体験が出来る。

あの喧騒なラストは一度見たら忘れられない…。

シャラントン、シャラントン。ナポレオン、ナポレオン。静粛に…の下り、凄絶。

本作はATG配給で当時、上映されていたがそこから今日まで1度たりとも円盤化されていなかった為、ほとんどの人が目にしていないと思うが、漸く観れて安堵している。原作戯曲のP.ヴァイスの世界観を翻訳した人も、台本にした人も凄い力量だ。

後、衣装が素晴らしいのと、案内人役のM.ウィリアムズのクローズアップの迫力は印象的だった。‪

余談だが精神治療の一環として実際に患者に演劇をさせていたらしい…本作は映像と台詞を楽しむ作風だと思う。‬

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