サンヨンイチ

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのサンヨンイチのレビュー・感想・評価

3.8
PLANBか。

#MeToo運動の発端となる
全米とハリウッドを震撼させたスキャンダル。

加害者を長い間野放しにしていた
法制度やしくみ自体にフォーカスを当て、
ハーヴェイワインスタインの名こそでるものの
システムの闇を深掘りしていく。
ひょんなことから
映画業界に踏み込んだ女性の笑顔が
たったワンシーンで恐怖と屈辱の色に変わる冒頭に
心を奪われる。

誰の目にも明らかな
加害-被害の関係性がありながら
それを特定し糾弾することが実現せず、
停滞する時間がやや長い本作の構成は
平坦なストーリーにも感じる。
だがむしろそれが絶望を助長する大きな壁となって
圧迫感を与えてくる。
主人公である二人もまた、
ヒロイックな描かれ方だけではなく
1人の人間としての過ごし方も見せることで
彼女らが無敵ではないことを十分に示している。

女性であるがゆえに
被害者へ寄り添う姿や
被害内容を連想して絶句する姿などの
リアリティの高さは
キャリーマリガンとゾーイカザンが保証してくれるが、
一方で
従来の女性が強いられてきた苦悩
(家事や育児、出世の難しさ)に苛まれる様子は描かれず
むしろ周囲と共働しながら
本案件と両立している姿に終始する。
これは
本作に必要ではない悲劇性を過度に煽らない
クリーンな脚本であると思うし、
実際に、家事や育児に悩んでいたかもしれないが
それを脚本に利用しない、
至極信頼できる作品であると思う。