岩嵜修平

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

3.8
MeToo運動が社会現象になるまでの女性たちの命懸けの奮闘。報道メディアかくあるべきを体現するNYタイムズの記者たち。命の危険や膨大な訴訟リスクを負いながら証言することを選んだ被害者たち。ワイン野郎や🃏だけでなく、法整備や社会そのものを糾弾する映画。

製作自体に意義のある映画だが、しっかり面白いのが凄い。オープニングが、終盤に効いてくる。夢のような映画の世界を、生き地獄にされた絶望感が、映画を通じて、その一端でも伝わって来る。マリア・シュラーダー監督、存じ上げなかったが、素晴らしい手腕。何かしらアカデミー賞に選ばれて欲しい。

名前が先に出るのはキャリー・マリガンだが、主演はゾーイ・カザン。それぞれに家庭を持ち、育児においては先輩後輩が逆転し、仕事面でも互いに馴れ合うのではなく学び合う関係性が素晴らしかった。パトリシア・クラークソンもアンドレ・ブラウアーも最高の上司感。しっかり任せケツは持つ懐のデカさ。

本作や『スポットライト』や『ダーク・ウォーターズ』みたいなガチ社会派映画を観せられると、一連の『新聞記者』シリーズは残念だし、『エルピス』ですら、もう少し最後まで事実に寄せて色々と出来なかったのか(10時間以上あったし…)と思ってしまう。小さな会社だと訴訟リスクがアレだろうが…。
岩嵜修平

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