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MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないの8637のレビュー・感想・評価

4.1
予告を観てから、今年最大級の期待をかけてきた映画の試写。どうせハマって映画館でも観に行くんだろうな...と思っていたら、予想外の展開に悪い意味で裏切られてしまった。
こんな事を冒頭に言ってはいけないな...結論としては大傑作だと思います!

邦画の新時代に集結したセンス。昨年公開の傑作ドキュメンタリー「14歳の栞」も制作したCHOCOLATEという会社、コンセプトが少し恐れ多いもののアイデアに溢れたエンタメ企業だな... 才気のこもる映像美の力量には劇場で観る価値がある。部長へのプレゼンシーンで大爆笑してしまったように脚本の妙も素晴らしい。斬新さと美しさと働く者たちの"活力"で構成されたこの映画が大好き。

タイムループものの企画は擦りに擦られまくっているが、この映画はそれを踏み台にした"実験"である。僕は実験してる映画が好きだ。一人称視点がタイムループに気付くという小さな奇跡から始まり、繰り返す中で成長し感じる高揚感に、「これこそが映画でしか叶えられない魔法だ!」なんて思ったりする。

時間軸はループし続けているのに物語には第2章のようなものがあって、予想だにしない角度から社会の中での孤独感を突かれる。ループによって得られる完璧さは現実に生かせるオプションではないから、結局これを観る自分自身は一方通行の時間を生きなければならない。「死んじゃだめだ」って、責任逃れさせないという周りからの圧力でもある気がする。だからこそ"自分が前に進めば、時間が前に進む"という構造が少し切ない。

仕事に限らず人生って本当に容赦ないよな。試写会中、部活のグループLINEから仕事の連絡が来て、一旦鑑賞を中断した。そう、自分だって今仕事に、選んだ人生に振り回されているのである。それが良いとも悪いとも思う。
最後思う事は人それぞれ違う気もするけど、明日は自分の業務を頑張りたいと思える。日曜日の鑑賞を推奨したい...!



2022.11.01 再見 @チネチッタ

凝り固まって前に進めない私達へ、信じられはしないありきたりな勇気を貰える。傑作。

広告やクリエイティブの会社としての色がかなり出た映画ではある。バンバン挙がるキャッチコピー案の語感やオフィス(特に木本事務所)の内装などは他で見られない洒落さがあった。
だからこそ、作り慣れてない故か映画としての欠陥は諸所あった。例えば、リリスクの停電ライブのシーンでとてつもない高揚感を予兆させるのだが、それを持続できなかったのは勿体ない。自宅や外の描写があればもっと盛り上がれた気もする。

プレゼンで部長を説得させるシーンは完璧すぎて、映画で久々に爆笑できた。しかし映画としてのピークもそこで終わったような気がした。
それでも何故だろう。二回目にして、初めてその後が沁みた。

試写会でこの映画を観た二ヶ月前と今で、自分を取り巻く環境がだいぶ変わっている。優先事項が増え、単調で無益で酷な日々が続き、ある"決断"も近づいている。正直映画館に行く時間もまともに取れない。それなのに、初見ではなくこの映画の再見に時間を費やした。
それでも劇場で見直したのは正解だったと思う。目まぐるしい視覚と聴覚からの刺激がいつしか過労の世界への誘引となり、タイムループのテンポ良い爽快感に悲喜を更に感じられた。

そもそもこの映画自体、"労働"を"学業"に置き換えたらマジで全て自分に直結する、そんな"選択"の物語だったのだ。

自分よりも順応でき、性能の高い周りの人に囲まれて劣等感を勝手に感じながら、自分の才能を信じられない毎日。人間不信になってしまいそうなほど酷な上層部。死にたいとかいうわけじゃないが、逃避はしたいよね。かと言って業務を全捨てして何かに臨める覚悟もないし...
だからこそ、現実を舞台に繰り広げられるこんな青春に憧れてしまう。それも結局、協働できる人がいるかどうかによっても変わってくると思うが。職場でこんな青春を感じられたら良いな。まぁ、明日からも頑張って"勇気"に追いついて行こう。
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