調伏系V魔虚羅

スピリッツ・オブ・ジ・エアの調伏系V魔虚羅のレビュー・感想・評価

4.8
オーストラリアの蒼い空と広大な大地でたった三人の登場人物が繰り広げる奇妙な夢想と現実の物語。
果てしなく続く荒野の中、辺鄙な場所に佇むボロボロの一軒家に住む兄妹。此処ではない何処かへ、まだ見ぬ景色を求めようとする、まさに夢追人である兄と亡き父との約束を重んじ、この辺鄙な地から離れようとせず、常に感情剥き出しな妹と偶然訪れた一人の旅人。内なる夢を現実にしようと、霞んでしまいそうな希望を必死に掴み取ろうとする兄の姿は滑稽で、でも眩し過ぎるくらいに輝いている。旅人もその姿に魅せられたのだろう。しかし、夢を追う過程で気が付く無慈悲なまでの現実が押し寄せてくる。僅かな希望を誰かに託すというあの最後の決断にどうしようもなく涙が毀れてしまった。“夢”という名の希望と絶望、叶うかもしれないし、叶わないかもしれない不安定なもの。それでも人は夢を追い掛ける。紛うことなき傑作。
調伏系V魔虚羅

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