忖度抜きの新たな傑作MCU映画の1本。
「この監督を起用してこの腑抜け具合かよ!?」が頻発していたMCUに、あの頃の栄光をもう一度。
「これ追撮だろうな」がほぼ無かい引き締まった画面と編集に「そうだよコレを見たかったんだよ!」が満ちている。
これからは「フローレンス・ピュー主演のセラピー映画は?」と言う問いに「ミッドサマー?それともサンダーボルツ?」と答えなければいけません。
双極性障害の化身「なんちゃってスーパーマン」セントリー(ボブ)との闘いに「対話」で挑み居場所と仲間を獲る王道チームヒーロー「セラピー」映画。
「暴力ではなく対話を」「セカンドチャンスは誰しもが得るべき」と言った今の時代のテーマを「尖った作りだがあくまでも大衆向け」の範疇で。
希死念慮を抱える落第者達(エレーナは落第ってより鬱屈が煮詰まった感じだと思うけど)が挑むのは邪悪な権力者と同じく「病んだ」落第者。
こうしたテーマやキャラクターへの良い意味での「MCUらしい」作りの優しい手触りが心地いい。
「ブラック・ウィドウ」の精神続編にしてオールスター映画、「ホークアイ」「ファルコン&ウィンターソルジャー」を繋ぐ「MCU配信ドラマ」の総決算で、「ブレイブ・ニュー・ワールド」と「ファンタスティック・フォー」の橋渡しを丁寧に果たす、正しい意味でのクロスオーバー作品。
「エンドゲーム後」のアベンジャーズに本当の意味で区切りをつける(6年もかかったのかよ)、MCUの中では「シビルウォー」に近い立ち位置の映画。
何度か涙ぐんでしまいましたよ。
人は一人では生きていけないし、寄り添う事こそ至宝だし、誰かに胸を内を話すのは本当に心地良い。
この俳優陣の中で誰もが色褪せる事なく、それでいて主人公としての格をピューが保ち続けるバランス感覚。
アクション映画としてはサンダーボルツ大集合からの乱戦、つまり冒頭が頂点で以降は凡庸だが、最後の最後にエレーナが華麗な舞いを魅せてくれるので文句はありません。
凡庸と言っても単純なキレの良さは「ウィンターソルジャー級」と言って差し支えないし。
Amazonがホームランダーやオムニマンを映像化してきた中で「人を影にする」ヴィジュアルセンス抜群の異能と単純なフィジカル化け物×サイコキネシスを使って銃弾を止めるドカ盛りセントリーの大暴れがもう一発欲しかった気もするが…それをやるとテーマから逸れてしまうので仕方なし…。
ドゥームズデイまであと1年、つまりサンダーボルツと再会するまであと1年、なんてスパン…ハリウッドデスマーチ…。