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アルゼンチン1985 ~歴史を変えた裁判~のganaiのレビュー・感想・評価

3.8
町山智浩さんがラジオで勧めていたので鑑賞。面白かったです。

クーデターにより発足したアルゼンチン軍事独裁政権下でゲリラ掃討の名目で横行した市民の拉致・監禁・拷問の首謀者である軍幹部を罰するため、1984〜1985年にかけて臨時政府により行われた民主裁判を描いた実話ベースの法廷劇。

主人公は司法相から主任検事を押し付けられたフリオ・セザール・ストラッセラ。多分50代くらいの疲れた感じのおじさん。

軍の報復を恐れたり或いはファシズム思想のベテラン法律家達から協力を拒まれたストラッセラは、若手ながら正義感溢れるオカンポ副検事の提案で熱意が頼りの若者ばかりで対策チームを編成する。

老練な相手側弁護団からはカブスカウトと揶揄されたチームだが若さ故の機動力で全国を駆け回り、短期間で700件を超える証言を集め、ストラッセラ自身も軍政権支持者からの圧力や脅迫を跳ね除け裁判への熱意を固めていく。

中盤は検察側に協力を申し出た人々の法廷での証言が続くのだけど、生々しく凄惨を極める証言が世論の支持を高めていく様が、軍関係者の多い家系で頑固な軍政権支持者だったオカンポ副検事の母親が検察の応援に回る場面に象徴されるのが良い。

映画冒頭ではストラッセラとギクシャクしていた家族の後押しも得て臨んだ最終論告も圧巻で、恐らく史実そのままに読み上げたのだろうが民主主義と社会正義を強く訴える今日世界中で普遍的に通用する演説になっているのが感動的だった。

映画としては地味な部類だけどエンドロールにルーカスのスカイウォーカーサウンドが名を連ねていたのが意外だった。

確かに妊娠中に拉致・拷問を受けた証人が廊下から法廷に入っていくシーンの音響は裁判に臨む緊張感をよく表していたと思う。
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