Masato

バルド、偽りの記録と一握りの真実のMasatoのレビュー・感想・評価

2.8

イニャリトゥ監督の内省的なヒューマン・コメディ。

まず見終えて一言目は「やっと終わった」。イニャリトゥ版「8 2/1」と聞いて、苦手だと察知して見る気が地を貫いてマイナスになったが、アカデミー賞で撮影賞にノミネートされているから仕方なく鑑賞。案の定ひとりよがりすぎて退屈だし、159分と長過ぎるのでキツかった。

シュルレアリスム的な幻想と現実が入り混じる夢、走馬灯を旅する映画として見れば良いかと。最終的には腑に落ちる展開に。ポン・ジュノがスコセッシの言葉を借りて「最もパーソナルなことは最もクリエイティブなこと」と言っていたが、あまりにパーソナルすぎて独りよがりすぎるのもね…と感じた。まあ感性の不一致としか言いようがないけど。

映像や撮影(ダリウス・コンジ)は流石イニャリトゥだし、撮影賞にノミネートされただけある。広角カメラを多用していて広々とした開放感がある。光の使い方、映し方が素晴らしかった。特に自然光、太陽光は主人公の存在を奪うくらいに美しくて超最高。テレンス・マリックやクロエジャオ、過去作のレヴェナントみたいにナチュラルかつ上質。
自然にしか成し得ない映像美を利用して見事に映画内に収めて自分のものにしてしまう素晴らしさ。緻密な計算の為せる技。光や空が印象的なのも、お天道様みたいな意味合いなのかね。

正直、映像が凄くなかったら一点台もあり得た…。映像にだいぶ救われた。
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