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ホワイト・ノイズのkeecoliquoriceのネタバレレビュー・内容・結末

ホワイト・ノイズ(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

著名なヒットラー研究家らしいのだが「実はドイツ語は分からん」のでこそこそ怪しげなドイツ語個人指導を受けている、という主人公ジャック(アダム・ドライバー)と、その家族。

夫婦はお互い4度目の結婚で、説明あったけど、どの子が何度目の何番目とかもう分からんなか、その子らは家の中でどーでもいい話題をさも自分にとっては重大とばかりに勝手にしゃべりまくる。

勤務先の大学でも、各講師が自分の専門についてさも重大そうに語りまくる。

という日常と、

出どころも根拠も全く不明なまま、全米に毒ガス雲の襲来のニュースでいきなり大パニック、陰謀説も飛び交い、人々は大移動する。

という突発とんでもな非日常と、

実は〝死〟にとらわれて不安定だった奥さんと、それにつけこむ変態野郎の関わりが発覚。

という夫婦間の危機と、

その果てに企てる〝殺人〟という、後戻りできなくなるヘビーな事件とが、

…てことはこうなりますやね、みたいにあっさりと、

すべて、並列の熱量で、アメリカ映画の名作の数々を踏襲するかのような映像で描かれていく恐怖。

よっしゃ、そういう平坦並列な状況から抜き出た、うまくやった、と思っても、いわゆるお釈迦様の手のひらの上。



〝死を殺す〟ていう誰かのセリフがありましたよね。あの変態野郎がある意味、死神なのでしょうか。(ジャックが夜見たイメージや、ぬいぐるみ拾ったのもあいつだよね、発言を考えるに、実際常につきまとってたのかもしれんが)

最後は三つ巴、血まみれで〝死〟となぁなぁになり、スーパーマーケットには鮮肉コーナーができて、みんな楽しくお買い物。無印のもの、色とりどりのもの山積みの通路を行ったり来たりして、なんだか必要ないものまで買っちゃったりして。



私は〝死〟が怖い。ふとしたときに考えてしまい、うー!と言いながら頭をプルプル振ってみたりする。というのが定期的に起こる。

私の地元には長らく、大型スーパーはひとつだけだったが、一昨年新しいのができて、今年の夏にまたさらに大きい別のができた。広々していて既存のところと品揃えも違っていろいろあり、それこそ通路を行ったり来たりするだけでちょっとした幸福感に浸れるので、用事がなくてもちょいちょい寄ってしまう。

どーでもいいこと、たいそうな出来事、スーパーに買い物いくことが、同じようにやってくる、そういうすったもんだのホワイトノイズがかき消してくれているのか〝死〟の恐怖を。

私の無目的なスーパー通いは、そういうことだったのか? と、この一見無秩序で狂った映画に、めちゃ引き込まれたのでした。知りたくなかったなー。


【ホワイトノイズとは】
https://www.audio-technica.co.jp/always-listening/articles/white-noise/

『ホワイトノイズは人間の耳に聞こえるすべての周波数が均等に混ざって出来ている音なので、サウンドマスキング*が得意という特徴を持っています。
つまり耳障りな音(覚醒音)をかき消してくれるので、耳障りな音が気にならなくなります。』
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