10円様

ホワイト・ノイズの10円様のレビュー・感想・評価

ホワイト・ノイズ(2022年製作の映画)
3.6
 やっと鑑賞。
 ノアボーンバッハの新作という事ですが評価はあまり良くないようですね💦でも私は監督の作品の中でもけっこう上位に入る面白さだったかなぁ〜その日のコンディションが良かったのかもね。

 本作、テーマって一体何なの?と全体的に散漫な感じがするし、構成も不思議で難解映画の部類なのかな?と思いきや、ノア監督なりのコメディテイストで時代を描いていますね。いや、この時代でありながらも現代までに至る物事の価値観変化ってのをブラックに伝えてくれています。

 80年代のアメリカって商戦がピークに達した時代なんですって。どの会社も自社の商品を売るために節操のない宣伝をしまくり、大袈裟だったり過剰だったりはまだしも、嘘の宣伝さえ普通に行われていたようです。これは現代でも似ていますよね。SNSやインターネットで情報を得やすい時代、嘘の情報も本当の情報もごった煮になっています。まあ、現代人の方がその真偽を見極める力は強いとは思いますが、それでも紛い物を掴まされる人はいます。
 原作はドンデリーロの「ホワイトノイズ」。1985年の作品ですが正にその真っ只中ですね。

 主人公のジャックは群集心理をナチスを例にして客観的に論じる識者ですが、いざ自分がその立場に立たされると群集と全く同じ行動をとるという皮肉…しかもその時には理路整然さはなく、むしろ息子や娘の方がしっかりしています。毒物から逃げ惑う群集、傍目で繰り広げられる人の死。作中では最も盛り上がりのあるシーンで目を見張るのですが、作品のテーマへの絡み方が弱いんですよね。「死を考えるきっかけ?」「自己も群集に過ぎない存在?」ちょっと理解ができません。

 テーマがあっちこっち飛んでるような作品ですが、80年代のアメリカサスペンスと60年代フランス映画を意識したようなバカバカしい作り(褒めてるよ)は意外にも好きになれましたね。
 あと死と生を考えた時にすがる宗教とドラッグを逆説的に捉えた語りも面白いなぁと思いました。まあ、信仰心が強い人がこれを聞いたら怒りそうな気もするんですけどね。

 主演のアダムドライバー。クールな二枚目の役が多い昨今のですが、この作品では冴えない見窄らしいおじさん。老けメイクか?って思うほどおっさんです。グレタカーウィグも同様にボロボロの女です。
 お互い監督作品では「マリッジストーリー」と「フランシス.ハ」でタッグを組んでいますが、全く違う役どころで良かったですね〜
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