賛否両論あったジョーカーの最新作。実際見たら確かに好き嫌いが分かれる内容だなと納得した。
前作でアーカム刑務所に入ったジョーカーことアーサーフレック。ムショの中で鬱屈とした生活を送るアーサーだが、同じムショ内の軽犯罪者リーと恋に落ちる。
このリー、ことハーレイクインゼルを演じるのがガガ様。こういうハーレイクインの表現の仕方もあるのかと新鮮な驚きがある。ガガがちょっと鳥顔なのが、独特な雰囲気を纏う。
アーサーは弁護士の言うまま裁判で争うことに。あくまで精神病ということで責任能力の無さを主張する弁護団と、極刑を主張する検事ハービーデント。
こういった裁判劇をホアキンの圧倒的な演技と、そしてガガの歌によるミュージカルシーンで心理戦が描かれる。ミュージカルにしたことは多分に実験的だが、ガガ様の歌あってこその説得力。
以下ネタバレ
さて、裁判で争ってきたジョーカーは弁護士をクビにして、自らが弁護人に。さぁココから鬱屈とした中盤までの憂さ晴らしが始まるぜ！思ったら…
アーサーは自分の罪を認め刑に甘んじてしまう。恋人のリーにもそっぽを向かれる始末。
意気消沈のまま刑務所で刺されて死ぬ。（死んだように見せて続きが作られるかも知れないが）
ジョーカーが完全に敗北者として終わるという映画だ。
確かにジョーカーというキャラクターで、この終わり方は無いだろう。
前作ではジョーカーというアメコミのトップヴィランにリアリティを与えるために精神疾患という弱さを加えた訳だが、それでもジョーカーのアイデンティティそのものは守られた。
今回は、あえてそのアイデンティティ破りをした訳だ。
ジョーカーの狂気が単なる精神疾患だけで、それ故に負けて終わると言うのであればジョーカーがジョーカーで無くなる。アメコミの実写化としては最も間違っていると言っても過言じゃ無い。その意味では否定派の意見も納得できる。アメコミファン・バットマンファンなら尚のこと反発するだろう。
だがバットマンサーガ自体が何度もリファインを重ねられていて「こういうユニバースもありかもしれない」と考えるファンもいるだろう。キャラクターの振り幅が広ければ広い程に作品の許容量が大きいと言うことだ。バットマンにそれだけの可能性があったから今作のような怪作が生まれた、と評価することも出来る。
獄中で殺されるというアウトレイジのようなオチ。拳銃自殺を妄想するソナチネのようなシーンなど、北野映画の様な悲哀は確かに魅力ある。
で、僕個人としてはどうかなぁ…。それでもジョーカーにはジョーカーらしい狂気を見せつけて大逆転して欲しかったのが本音だ。今まで散々虐めてきた看守を全員虐殺して堂々と脱獄するヤバさを見せつけて欲しかったし、せっかく出てきたハービーデントをトゥーフェイスに闇墜ちさせて欲しかった。
