ナンニモレッティ監督作品。
これは面白い!ヘンテコで愛すべき傑作映画。
3話構成の日記をベースにした映像エッセイ。虚実入り混じり、ゆるい笑いもところどころに。
しかしなにより、映像感覚が最高。1話目のバイクで街を行くシーンは特に心地よかった。ただただ気持ちの良いシーンが続くので、ストーリーはどうでもよくなる。
ギャグやストーリーで「?」となるところもあるにはあるのだが、圧倒的な映像センスにただただこちらは楽しくなる。
深田晃司監督が本作について語っている動画を観たが、そこで、「意味に従属していない映像」とおっしゃっていた。たしかに、と膝を打った。ストーリーや意味に従属しない、自由な映像の連なり、それこそが本作の最大の魅力だと思う。
ストーリーも映像も、構成も、良い意味のゆるさが感じられる。ホン・サンスや、ロメールなどの熟練のゆるさ、脱力感があって最高。侘び寂びすら感じさせる。
そして「息子の部屋」でもそうだったが、ナンニモレッティ監督は音楽センスが良い。ブライアンイーノ、そして本作ではキースジャレットが効果的に使われていた。
とにかく、センスが自分に合う監督だなと、「息子の部屋」と本作を観て感じた。
ただ、ストーリーも日本人にはわかりにくかったり、緩慢に感じる人もいそうに思うので、この映画は合う合わない、好き嫌いがはっきり別れそうだとは思う。そして、映画ネタも多く、そこがより本作をマニア向けにしてしまってはいる。
個人的には大傑作に感じた。ヴェンダースを、エドワードヤンを、侯孝賢を、ホン・サンスを、ジャームッシュを本作から感じた。他にもいろんな映画と似た感覚、エッセンスが結集しているように感じた。
もっと色々な人に知られて良い傑作だと思う。それも観る時は、肩の力を抜いて観てほしい。
観てそのまま、このレビューを書いているのでついつい熱量が入ってしまった。それくらい良かった作品。おすすめです!