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映画 日本国憲法のtakのレビュー・感想・評価

映画 日本国憲法(2005年製作の映画)
3.5
以下、2005年筆。

ドキュメンタリー映画「日本国憲法」の上映会に行って来た。監督のジャン・ユンカーマン氏の講演もあり、いろいろ考えさせられるよい機会だった。

2005年は戦後60年の年。イラクへの自衛隊派遣から改憲論が高まってきている。制定以来一度も改正していない我が国の憲法は、人権条項のことを考えても改正を考えなければならない時期だろうとは思う。しかし国の基本的なしくみ・制度を定めた法を変えるのは慎重でなければならない。特に世界的に見ても憲法第9条は平和・戦争の放棄を定めた点で重要な条項である。派遣の為だけに簡単に変えてよいものではない。

このドキュメンタリー映画は、”平和憲法”としての日本国憲法は、外国人から見てどのようなものなのかを改めて僕らに示してくれる。しかも様々な学者・研究者の言葉で語られるだけでなく、一般人の声までも聞くことができる。僕はイラクの一般人が自衛隊派遣のことだけでなく憲法9条についても話すところ、また中国の映画監督班忠義(バン・チュンイ)氏が「9条は神が私たちに贈った宝物」と話すところに衝撃を受けた。日本は戦後処理について謝罪をしない、とよく言われる。靖国参拝を巡って東アジアの国々とギクシャクしている。でもこうしたことが現在の程度で収まっているのは、まさに憲法9条のお陰なのだ。戦争の放棄を謳った憲法を持つ国が、軍事主義的な方向には走れない。「9条こそが戦後謝罪だったのだ。これを放棄することは謝罪を放棄すること」や「憲法改正は国内問題ではない。国際問題なのだ。」という言葉が、これまで自分が考えていた以上の重みをもって感じられた。

イラク派遣のときに憲法前条文を挙げて持論を主張していた小泉首相、そのイラク戦争に踏み切ったブッシュ大統領の姿も、この映画には登場する。ここでの描かれ方はマイケル・ムーア程攻撃的ではないけれど、改めて「こいつでいいのかな?」という気持ちにさせられる。

憲法改正が論じられ始めたのはよいことだと思う。人権問題を始めとして、現実とのギャップを埋める必要があるからだ。憲法は国民が制定して政府につきつけたもの。遵守義務は政府・公務員にある。そこをもっと多くの人に再認識して欲しいし、憲法改正論議に無関心であってはいけないのだ。ましてや時の政府に都合のよい改正であってはならない。

ユンカーマン監督の講演の中で「問題解決のために手元にハンマーしかなかったら、全ては釘に見えてしまう。叩くしかない。軍隊しかなければ、残念ながら武力を行使することしか考えないのです。」という言葉があった。そこには軍事主義に走り戦争が日常であるアメリカを憂う響きがあった。でも日本国民には憲法9条がある。日本が平和を謳うリーダーになることはできないのだろうか。
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