青二歳

彼女の發言の青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

彼女の發言(1946年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

1946年戦後1年の松竹夫婦ドラマ。メロドラマの風情だが夫婦の冷戦がリアリティに満ちて見事。
女社長の三人娘は社員を婿に迎えていたがどうもうまく行っていない。長女田中絹代の夫佐分利信は釣り好きだが妻はそれも魚くさいと気に食わない。夫も不機嫌な妻を見たくないので幼馴染の芸者の元に通う始末。
次女水の江滝子の夫高田浩吉は上方出身のおぼっちゃま。鼓をたしなみ女社長の謡曲の稽古に付き合う程だが、次女はそのインドアな嗜好も、はんなりとした性格も面白くない。
三女星美千子はそんな姉を見ているからか、母がすすめる若手社員との結婚話にはけんもほろろ。

何かがちがう、こうじゃないと、夫に求める何かがあるものの、ディスコミュニケーションが進んで行く不毛。あることをきっかけに、妻田中絹代は夫を理解する一端を掴む。心を頑なにした片方がほどけると片方も自分の想いを素直に伝えることが出来る。
次女も自分を追ってくれた夫を理解する。

正直なんで冷戦が溶けるのかはイマイチ分かりにくいですが、どうも説得力があるので感心してしまいます。お互いの求めるものをすり合わせて行けばそこまでかけ離れてはいないのに、コミュニケーションが一度くじけると、立て直すのに時間がかかってしまう。夫婦だからこそ頑なになってしまうのは何故なんでしょうねえ。
次女なんて物足りないってだけですよ、もっと情熱的な男性的な振る舞いが欲しいだけ。愛情の表れ方が理想と違うだけで十分愛されているとやっと気付くんです。悪く言えば三人娘はどれもわがままなんです。でもリアル。

なお佐分利信は田中絹代の仏頂面のほか、義母である女社長に自分の企画が通してもらえないことでもイライラしていまして。この企画というのがおもちゃ工場なんですね。兵隊とか鉄砲やチャンバラじゃない情操教育のおもちゃを子供達に届けたいと頑張っています。
別にチャンバラと戦争は因果関係ないと思うんですが(アニメは性犯罪を助長する論みたい)…戦後平和を希求する製作者の想いと、あと何を置いても【GHQ検閲下】ってことを忘れちゃならんのでそこは深く突っ込まず。ただ佐分利信と女社長がいうこの国の未来を子供に託そうという情熱は心から素直に感動します。46年製作の映画に、戦後復興の静かなるエネルギーが見えました。
あとこの時公衆電話は10銭だそうです。電話回線も空襲でズタボロだったので、セットでも公衆電話が見えるとなんか感心します。