矢吹健を称える会

桜色の風が咲くの矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

桜色の風が咲く(2022年製作の映画)
3.6
 失明するまでの丁寧な描写で、はちゃめちゃに涙腺を刺激される。正直、前半はとめどなく落涙させられた。小雪と吉沢悠(個人的には『エキストランド』での怪演から久々の再会で、嬉しかった)が喫茶店で会話して、吉沢悠が小雪の苦しみにあらためて目を向けるシーンなど、繊細に撮られていると思う。二人には何らかの賞が与えられてほしい(あと、病院で異常なほど達者な演技をする子役にも)。
 海辺のシーンは殺人的。シャッターの使い方……。

 一方、成長した田中偉登のパートは、どちらかといえば、なるほどなあと感心することが多かった。まず、盲学校の日常において、彼らが手すりや杖など使わずとも、健常者のようにすらすら階段を下りたり、校舎内を移動する様子に――いや、これは私の無知蒙昧を告白することに他なりませんが――驚かされた。また、点字を打つ際に用いる機械も、私は初見で、こういうものがあるのかと……しかもそれが終盤の展開に(視覚的にも)活かされるのは、感動的なアイデアだと思う。
 ただ、音楽が多くのシーンで邪魔にしかなっていないのは良くないと思った。ミキシングのせいなのか、台詞がよく聞きとれないシーンもある。終盤でピアノの音色を「聴く」シーンは『コーダ あいのうた』を思い出したが、あそこまで効果的には使われていない。