全身小説家の作品情報・感想・評価

「全身小説家」に投稿された感想・評価

人に勧められて観たドキュメンタリーではあるし、この作家のことも知らなかったけれど、どんどん引き込まれていく作品だった。虚構は作家にとっては得意中の得意だろうが、自分の人生自体を虚構に染め上げた井上氏には、呆れを通り越して天晴れとも思う。この男の人生そのものが虚構であった、それこそ天性の小説家ではないかと思う。
そしてきっかけはどうあれ大変面白いものを撮れた監督が、インタビューで飄々としていたことも興味深かった。
matool

matoolの感想・評価

3.0
よくわからなかった。
あきら

あきらの感想・評価

4.8
小説家井上光晴のドキュメンタリー。
なんやかんやで3回くらい観たような気がします。

原監督といえば『ゆきゆきて神軍』なイメージがあるけど、2回目くらいでこの人ひょっとしなくても奥崎謙三よりもタチ悪いのかもと思ったかな。
奥崎氏も相当厄介な人だったけど、言ってることは都度本気だった。
けどこの井上光晴という人は巧みに虚構を混ぜてて、さすが小説家。
撮られていることを隅々まで自覚して踊って見せては「で?何を見たいんだ?」と問いかけてくる眼が冷笑的だったり、撮ってる方はけっこうストレス感じてたんじゃないかなと。

ありがちなガンとの闘病記みたいなお涙頂戴モノとは違う描き方はけっこう好きでした。

文学伝習所って言ってみれば小規模なカルトみたいなとこもあったけど、おばあちゃんが突然“おんな”の顔になる。その瞬間が鮮やかすぎた。「あの人は私の耳を綺麗だと言った」って…
耳って!なんて絶妙な!ほどよく当たり障りなく、ほどよく性的。これは見習いたい。

いわゆる人誑しってこういう感じなんだろうけど、彼女たちに幸せな夢を見せたことだけは確実で、表現者ってこうあるべきなのかもな…みたいなことを思った上で「全身小説家」のタイトルが見事すぎた。

たしかにMVPは寂聴さんだし、埴谷雄高があんなにかわいくて驚きましたよ。
混沌

混沌の感想・評価

-

このレビューはネタバレを含みます

ドキュメンタリーについて考えさせられる作品。
原一男が天才なだけ、、、
miyagi

miyagiの感想・評価

3.0
教祖のように崇める信者たち。嘘と気付いてないのだろうか。次々と暴かれる嘘は痛々しいまでの現実をつきつける。裸の王様といったところか。
原監督独特の芝居がかったドキュメンタリー作品😁

本当に狂気と正気の狭間を常に
往き来している人の素なのか
芝居なのかが分からない
映像には本物の迫力がある😬

これもエンターテイメントの
ひとつの形です😘
先日観た欅坂・平手主演の「響」はいかにも漫画の世界の天才文学少女のお話だった。
華々しく文壇に現れる主人公よりも、心身を削り成功を掴もうとする者、すっかり書くべき対象を失った彷徨えるかつての才人など、小説家なる怪しい存在の様々な姿に惹かれた。

熊井啓の「地の群れ」。
トラウマ映画であり、今見ても尚凄まじい作品と感じられるのかどうか、いつかスクリーンで観れるまではと再見していないが、長崎の海塔新田という被爆者部落を描いた心身を削り取られるかのような作品だった。
その原作者こそが、このドキュメンタリーの被写体井上光晴だった事をすっかり忘れていた。

文学伝習所なるものを開催。
商売なのか、ボランティア精神なのか、人たらしなのか、グルーピーに囲まれるかのような特殊な空間。
老成の女性が顔を紅潮させ、井上光晴への恋慕に似た情を語る。
色が白くて肌が綺麗とも。
彼ら彼女らと、時に激昂し時に道化て戯れる姿が、なんとも気色悪くもあり可愛らしくもある。

癌を患い、死に向かう。
ひとりの作家の闘病と仲間との友好を描くだけで終わらないのが、原一男。
先日見た情熱大陸上がりがラーメン屋を撮っただけの志も何も無いようなドキュメンタリーとは比較するのも失礼だが、ステージが大いに異なる。

"嘘つきミッちゃん"のエピソードから、虚飾部分を徐々に剥いでいこうとするのだが、そんな恣意を井上光晴の人間性が跳ね返すかのよう。

また本作では珍しく回想シーンを怪しいモノクロ映像で再現し挿入しており、なんともエロティック。
奇しくもいずれのシーンも嘘かホンマかよく分からないというのも面白い。

特典映像の精神科医との対談を見てつくづく思うのは、原一男の油断ならない聞き上手ぶり。
結論ありきの持論を滔々と喋る快感に酔うことなく、自らの流れに引き寄せる術を心得てらっしゃる。
見習わねば(^^;;

娘さんの井上荒野の小説も読んでみたい。
Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

3.0
‪「全身小説家」‬
‪戦後派文学とは彼の事を言うだろう。本作は熊井啓が監督した“地の群れ”等で有名な小説家、井上光晴のドキュメンタリーで原一男の力作で三段階に分けられた話。まず癌との闘い…周囲へのインタビュー…そしてイメージ映像。更にフィクションと融合させており非常に見応えのある作品だ。‬
ヒルコ

ヒルコの感想・評価

3.7
前半と後半でガラッと変わる映画。前半は女ころがしのジイさんが癌になって大変だなぁなんてボーッと見てたけど、再現Vが入ってからの違和感と、どうしてそうなのかがわかった時、やっぱり原一男スゴイなと思いました。知らない作家のジイさんと思ったら、こないだ見た映画「地の群れ」の原作者で、なるほど本当に作家としては力のあった人なんだなぁ嘘もうまいだろうなぁ、って言うよりこの人の中では何度も言い過ぎて本当になったのかもなぁなんて思ったりもしました。わたしは絶対に原監督にドキュメンタリーを撮られたくないです。
kyoko

kyokoの感想・評価

4.0
原一男まつり ラスト

面白かった~

絶賛ガン治療中の、いずれは死に行く人の虚構が砂のようにボロボロと崩れていくのを、こんなふうに笑って見られるのは、原一男監督の力はもとより、3割バッター・嘘つきみっちゃんの魅力によるものが大きい。

伝習所ガールズが井上氏を語る時の目が本気で潤んでいる。
(耳をほめてもらったと嬉々として話す女性の隣にいるご主人にズームインする、あのザ・原一男なカメラワークがたまらない)
そして全員、口では「奥さんが、他の女性が」と言っているけれど、自分がいちばんだった時期があったことを1ミリも疑っていない。
通りすがりに「チュッ」って、どんなテクニックよ(笑)
普通のおじさんなら瞬く間に捕まっている。

まるでオセロのように真実と虚構が入れ替わる。
「死」以外、真実は存在しないかのようにも見えるけれど、奥さんの心境はともかく、井上荒野はりっぱなファザコン作家になったし、伝習所ガールズはみっちゃんの思い出に満たされた心のまま生きていける。
井上光晴というフィクションが必要不可欠だった人たちの存在こそが真実。


公開当時のチラシやビデオパッケージにあるコピーが凄い。

「嘘もつきおわりましたので、……じゃあ」
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